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 「この写真を見てほしいのですが」  四条雪乃が、冬城に呼び出されたのは今朝のことだ。彼は、四条の家の前まで来ていた。  いつの間に、自分の住所を把握していた。  冬城は、四条が玄関から出てくると、早速スマホの画面を見せた。それは、翠が丘学園の本棟の写真だった。二階には横断幕がかかってあるから、これは体育祭のときのものだ。  「はい」  「見て分かる通り、二階の部分に横断幕がかかっていますね」冬城はどこか嬉しそうに、そう言った。「体育祭のときは、ずっとこんな様子でした」  「はい」  「あなたは、こっそり教室に飲み物を取りに行ったとき、二階の窓から三年生のリレーが見えたと言いましたが、あれは嘘ですね」彼は、四条の顔を窺う。「体育祭のとき、んです」  「‥‥‥そうですか」  「しかしあなたが言った、二コース目の人がフライングしたというハプニングは、どうやら本当のようです。三階の窓から、それを見たんですね?」  「‥‥‥」  四条の頭の中は、空っぽだった。  ただ、その虚無の中から、夏奈の笑顔が、皮肉にも浮かんできた。  なんで。なんで。  「もう、止めにしませんか」  彼のその一言が、四条の背中を押した。  「すみません」四条は腰を折った。「私が殺しました」  潔い告白だった。  もう、すべてがどうでもよかった。  四条の目的は、あくまで馬田を殺すことだった。事件が自殺として処理されればなおよかったが、現実はそう甘くないらしい。  四条は一応、アリバイも用意していたが、その調子だと目の前の男はそのアリバイさえ見破っているのだろう。  ずっと、冬城の掌の上で踊らされていただけだったのだ。  騙したつもりが、騙されていた。  「ようやく、認めてくれましたか」  冬城はひと仕事を終えたように息を吐くと、なぜか踵を返した。  「え、逮捕しないんですか?」  四条が驚いて口にすると、彼はゆっくりとこちらを振り返る。  「事件を終わらすのは、僕ではありません」    四条は自首した。
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