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朝
現金なもので、ドッと元気が出たかすみは、朝のランニングを始めようと決意した。夏休みの後半にはサークルの合宿もある。そこで技術を上乗せしたいなら、今から基礎体力をつけておかねば。
あの「開かずの踏切」のおかげで、コンビニへ行くだけでもトレーニングになる。遠回りして坂を上って――
あれ。あのお祖父ちゃんと、兄弟。
「おはよう、お姉ちゃん!」
愛想のいい弟が、元気いっぱい声をかけてきた。え、昨日天体観測したってのに、こんな朝早くから――いや待て、もしかして徹夜だったとか?
「違うよ、そんなことしたらママに怒られちゃうもん」
「な。夏休みだから星見るだけならって約束なの」
「なー」
そうか。
「昨日は星見えた?」
「えへへ、寝ちゃったからわかんない……いつも8時に寝るから」
「オレは8時半まで頑張ったんだぜ。な、じいちゃん」
「兄ちゃんだってずっとウトウトその後寝ちまって。じいちゃん、2人を連れて帰るの、大変だったんだからな」
「じいちゃんも眠いんだもんな。いつも寝るの、オレらと一緒だから」
「起きるのもな。だからこうして朝はラジオ体操だ!」
微笑ましく聞いていたかすみは、だんだん自分の顔色が冷めていくのがわかった。
彼らの「夜」は8時……せいぜい9時で打ち止めなのだ。子供と年寄りならそうかもしれない。もうおうちへ帰って寝る時間。
なら、片山は9時以降なら彼らに知られず真奈のアパートを訪れることができた……。
かすみは、よろけながら坂を下り始めた。
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