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私は、素通りしようと思ったが、思わずバス停に着けてしまった。「そうだ!」もうこの時間はバスは無いことを伝えよう、そう思った。当然本人も分かってる事だろうとは思ったが、他に話し掛ける言葉が無いからだ。私は前扉を開け女性に言った。
「もうこの時間だとバスは無いですよ」すると女性は言った。
「そんな筈は…。いつも週末の金曜日には、この時間のバスに乗って帰ってるんです」
「確かに、去年迄はあったんですけどね、ダイヤ改正でこの時間のバスは無くなったんですよ」
女性は困り果てた顔で、私に何かを訴えたそうな顔をした。
この時、私は迷った。回送のバスには人を乗せてはいけない決まりがある。しかし、この時間でこの近辺を走ってるのは私だけ。少し様子がおかしい変わった女性ではあるが、このまま女性をほおって置くことが私には出来ず、内緒で乗せてあげることにした。
「あの、本来ならば回送のバスに乗せることは、禁じられてる事なので駄目なんですが、今回だけ特別にお乗せしますよ。そのかわり、内緒でお願いします。誰にも言わないって約束してくれますか?」すると女性は言った。
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