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《4》 悪評
翌日、学校では、唯の悪い噂が広まっていた。
──同時に三人から告白されて、同時にその三人と付き合うことにしたんだってさ。
──風船みたいにふわふわした女だな。あんなやつのどこがいいんだ。
──三人とも可哀想だよね。この話、もっと広めた方がいいんじゃねーの?
冷たい視線に晒されながらも、唯はまったく気にしていなかった。誰が見ていたんだか知らないが、わたしの恋はわたしだけの恋だ、人にとやかく言われる筋合いはない──そう思っていた。
ひそひそ、ひそひそ……。
一日中、噂好きな女子たちの標的とされたが、面と向かって文句を言ってくる者はいなかった。結局、唯は一人で昼食をとり、その日は誰とも話さずに帰宅した。
そして迎えた、金曜日。
事が動いたのは、放課後のことだった。
告白をしてきた三人の男子それぞれから、体育館裏に来るように言われたのだ。逢引なんてロマンティックなものではない。それは真に強制力のある「命令」であった。
まだ陽は高く、うだるほどの暑さが場を占めている。体育館の陰にあっても、上から下から、右から左からと、炎のような熱が身を包む。さらに怒気をまとった男子三人が、今すぐにでも殴れるぐらいの距離にまで詰め寄ってくるものだから汗が出る。
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