夜の思い出

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「夜にしか咲かない花を見た事はある? そう言えばあったな。確かあれは今から二十年前か。とても綺麗な花だった。今まで見た花の中でも別格だったよ。俺がまだ高校一年生の頃で、その年の夏休みを満喫していた時の話なんだけどさ―――」 ━━━二十年前━━━ 俺は夜道を駆け足で進んでいた。 「やっべ、もうこんな暗くなってる」 友達と遊び過ぎて帰りが遅くなり、夕焼け小焼けを通り過ぎて夜になっていた。 「あーあ、また母ちゃんに怒られる………」 この前も同じ時間帯に帰ったらこっぴどく叱られた。 「毎日毎日、あんた遊び過ぎるのもいい加減にしなさい! 夏休みの宿題もほったらかして、終盤に泣きべそこいても母さん知らないからね!」 頭から角を生やし、眉間に皺を寄せたあの顔を見るのがうんざりするのに、今日もまた見る羽目になる。 こちとらもう高校生だぞ。小学生じゃねーんだからいちいち口出しすんじゃねえよ、ったく。 はあ、とでかい溜め息を吐いた時、左手に眩しく光るものが目に入った。 なんだろうあれ、すげえ光ってんなぁ。あそこってただの空き地だよな。 走り疲れて息を整えるタイミングには丁度よかった。回れ左をして空き地に足を踏み入れた。光るものに吸い込まれるようにゆっくり近づいていくと、なんとそこには、とても美しい綺麗な白い花が一輪だけ咲いていた。
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