flower

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 ある世界の、ある機械達の国。 「ねえ、知ってる?」  小さな機械が言いました。 「なに?」  大きな機械が答えました。 「枯れてしまう花の話」 「枯れるってなに?」 「さあ? とにかく、機械じゃない花ってこと」 「なにそれ?」 「わかんない。でも見たくない? 機械じゃない花」 「うーん。あるなら見たいかもね」 「よし、じゃあ探しにいこう」 「どこへ?」 「それを探すんだよ。冒険だ。さぁ、行こう!」 「え? 今? めんどくさいかも……」 「こうゆうのは、思い立ったがなんとかって言うだろ?」 「そうなの? じゃあ準備しよう。何が要るかな? リュックサックにお弁当? オイルサンドにしようかな」 「荷物は軽めに! あ、でもオイルサンドいいな。ボクも持っていこう。水筒も忘れずに! じゃあ、準備してまたここに集合ね」 「わかった。めんどくさいけど、がんばるよ」  1時間後 「………なに、その荷物。軽めにって言ったよね」 「うん。だからいっぱい考えて、使うやつだけ持ってきたんだ。お昼の休憩用のテーブルは持ってこれなかったけど」 「お弁当と水筒だけでいいよ。あとは全部置いていく」 「え!? うそでしょ? お昼寝用の枕も? ダメ! これだけは持っていく!」 「………じゃあ、それだけ特別ね。他はダメ」 「えぇ〜……わかったよ、しょうがない。君の好きなコロコロオイルキャンディも持ってきたけど……しょうがないよね……」 「コロコロ!? ………あー、それはいいんじゃない? 持っていっても」 「え? なんで?」 「それはそんなに邪魔にならないし……いざって時の食料にもなる」 「なるほど。じゃあ、持って行こう」 「よし、出発だ!」 「右? 左?」 「うーん、そうだな。キミとボクの家は左にあるから、右に行こう」 「なるほど。左に行くと家に帰っちゃうもんね。じゃあ、出発〜」  こうして機械の二人は、機械じゃない花を探しに冒険に出ました。 「こっちはどこへ行く道かな?」 「そんなの決まってる。花がある道だ」 「そうなの? じゃあ安心だ。このまま進めばいいもの」  しばらく行くと、道が2つに別れていました。2人は考えます。 「どっちが花のある道かな?」 「うーん……道しるべにはなんて書いてある?」 「道しるべ? ああ、倒れてるね」  2人は道しるべを立て直しました。でも長い間雨風に晒されて、文字がかすれて読めません。 「困ったな。これじゃどっちが花の道かわからないぞ」 「そんなの簡単さ!」  そう言って小さな機械は道しるべを書き直しました。 「ほら、これで完璧」  出来上がった道しるべには左右に"花行き"と書かれていました。 「すごい! これでどっちに行っても花に辿り着けるね」 「まぁね。このくらい朝飯前だよ」 「朝飯? もうすぐ夕方だけど」 「よし、じゃあ右と左どっちに行こうか?」 「どっちでもいいよ」 「どっちも花に着くんだから、別々の道を行ってみない?」 「なるほど、じゃあ競争だね。ボクは右」 「じゃあボクは左か」 「「よーい、どん!」」  2人は別々に歩き出しました。いつものように、いつもの笑顔で。 「結構歩いたぞ」  大きな機械が後ろを振り返りながら言いました。 「まだまだ先は長そうだな」  そう言ってまた前を向いて歩き始めました。 「あ、そうだ!」  リュックの中からオイルサンドを取り出して口にポンと放り込みました。 「おいし。でも、もっと食べたいな」  リュックの中でカランコロンとコロコロオイルキャンディの音がします。 「1個だけ食べようかな」  リュックからコロコロオイルキャンディを取り出して口にポンと放り込みました。 「おいしー! アイツ怒るかな? 合流したら残りを全部あげよう」  コロコロオイルキャンディを頬張りながら小さな機械のことを考えました。楽しいような、嬉しいような、そしてちょっぴり寂しいような……そんな気持ちを抱えて大きな機械は歩きました。  それからどれくらい歩いたでしょう。  いくつもの錆びついた機械の荒野を超え、いくつもの砂漠の丘を超え、いくつもの瓦礫の山を越えて、見たことのない大地に辿り着きましたが、大きな機械はガクンと大きく揺れて、それから動かなくなりました。  大きく揺れた衝撃でリュックの中からカランコロンと音がします。  リュックの隙間からコロコロオイルキャンディが1つコロンと落ちました。コロコロコロコロ転がって、コツンと何かに当たって止まりました。動かなくなった機械のようです。  その時、一陣の風が吹いてひらひらと舞うように2つの機械の間を何かが通り過ぎていきました。  ある世界の、ある機械達のお話。
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