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錆びた大きなアーチ型のドアのノブに手を掛ける。
右にノブを回し、肩で押しながらじゃないと開かない重たい扉の向こうにぽつんと見えたのは、地面から伸びたような細長い台がひとつ。
手元の蝋燭がたらりと垂れて、金色の燭台に白く固まった。
紙ひこうきがふたつ並んでいた。
触った手触りは妙につるりとしていて、折り目を少しめくると新型――と言っても古い広告らしく、ブラウン管テレビが激安の赤い見出しを付けられて、でかでかと紹介されていた。
「紙ひこうき、か」
あれは確か、ユウが長引いたしつこい風邪で一週間ほど休み、やっと学校に登校して来た日だった。
来年は中学だねってユウがトンボ丘から町を見下ろして言ったから、六年生だ。
もうすぐ夏も終わる。
雲ひとつ無い空に浮かぶ太陽は、目を覆いたくなるくらいの陽光を世界に降り注いでいた。
一度家にランドセルを置きに帰って、トンボ丘に集合。
それが俺とユウのいつもの放課後だった。
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