あの日の線香花火

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「あたしが休みで寂しかった?」   家から持って来た、随分と昔のチラシを僕にも一枚よこして、膝の上でひこうきを折りながらユウがからかうように言った。 「あほか。部屋も真横なのに何が寂しいんだよ。毎日いびきが聞こえてうるさかったなー。あと鼻かむ音も。ズズズーッて」 「うわ、サイテー。あんた、これから中学に上がるのに、そんなんじゃ女子に嫌われるよ」   ひこうきの右の翼を折り曲げながら冷たい視線を投げて来るユウに、俺は「関係ねーな」と鼻であしらった。   関係ない。そう。関係無いんだ。 「ふーん。関係ない、ねぇ」 左の翼を折りながら「タケちゃんは女友達多いもんね」と続ける。 「別に。どうでも良いだろ、そんなの。ユウだって、男友達多いじゃん」 「あ、ユウが男みたいだからかー」と付け加え舌を出してからかった俺に、ユウは蛇よりも鋭い睨みを飛ばし、紙ひこうきに視線を戻して何か呟いた。 「何だよ」 「は?何も無いし。馬鹿じゃない」 ユウは昔から口も悪い。 幼稚園の頃一度だけ伸ばした事のある髪も気付けばずっと短いし、背も高いのもあって、一緒に歩いていたら時々「お兄ちゃん、偉いねぇ」とか言われるくらいだ。 その度にむかついて口を尖らせる俺を、ユウは「タケちゃん、チビだからね」と勝ち誇った憎らしい顔で見下ろすのだ。
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