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報い
陽はまだ高く登っている。
その光を遮るようにその部屋は御簾を下げて、几帳で囲んで小さな空間を作っていた。
「やはり少年の肌は柔らかくていい」
上皇さまの異様に興奮した声が聞こえる。
和歌や武道など多趣味な上皇さまの影に隠れて目立たないが、もともと側に侍る男女は身分を問わず多かった。
「いやっ…乱暴はいや…上皇さま…あ……」
「俺に口答えするのか?それもまあかわいいが」
院の御所で昼間から睦言が聞こえる。そのせいか誰もここに近づいてこない。
「や…あぁ…っ…、お許しを…」
「何をだ?俺に謝ることをしたのか?」
張り巡らせた几帳の向こうから喘ぎ声が止まらない。肉がぶつかる音と、衣のざらっとした音が淫靡に響く。
「本当はこうされたかったんだろう?」
「…は…ぃ……」
「淫乱な体だ。まるで俺を吸い込むように求めてくる。そんなに男が好きか」
「そんな…僕は…、乳母さまの言う通りに…あう…!」
「俺だから好きなのか?いま最も権力があるのは俺だからな」
「…違います…」
肉のぶつかる卑猥な音と甘い嬌声がずっと続く。
終わる事がないんじゃないかと思うくらい、それは長く続いていた。
「俺はやはり声を聞くと興奮するな」
行為を続けながら上皇さまが呟く。その間も欲望を刺激する声は絶え間なく続いた。
「ぁ…ぁぁ…ん……」
体力の限界か少しずつ声が小さくなっていく。絶頂に達したのか、嬌声が激しい呼吸に混ざって吐息になって消える。
「お前も初めは俺についてこれなかったな」
几帳の向こうからさらさらと衣ずれの音がした。
僕は御簾の外でたちすくんだまま、呆然と立っている。院のお召しで参院してこの状況。
僕の知らない誰かを抱いている。
「そう思わないか?守屋」
全ては叡慮による。
まだ声が出ない僕は心の中でそう答えた。
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