258人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
「おはようございます」
まばゆい光とともに、溌剌とした声が耳に届いた。
「……はや、と?」
ぼんやりとした視界のなか、覗き込む心配そうな顔をしたかわいい恋人を認め、思考がクリアになる。
──あ!
めずらしく後処理などせず、眠ってしまったことを思い出す。
慌てて上体を起こし、颯斗へ謝罪する。
さすがにロングフライトからの、全身を使った情緒の深め合いは思った以上に疲弊したようだ。
こんなことは初めてである。
「悪かった、颯斗」
クソ、と舌打ちをする。
攻めのプライドがズタズタだ。
「なにがですか?」
きょとんとする颯斗は、後始末のことなどなにひとつ責めない。
本当にいい恋人だと思ったが、攻めとしてはやはり自分の寝落ち行動が赦せない。
だからといって、このままなかったことにもできないため、自ら開き直って申告する。
「いや、だから……颯斗の身体を綺麗に」
言いかけたところで颯斗が遮った。
「昨日も綺麗にしてくれてありがとうございます……それであの、実は」
どうやら昨日は寝落ちしたと思っていたが、無意識に颯斗の身体は清めていたようだ。
ほっと安堵する。
それからベッド脇におずおずと恥ずかしそうに、佇む颯斗へと視線を向けた。
颯斗は着ていたオーバーサイズのTシャツの裾を、躊躇いながら後方だけ持ち上げていく。
たぶんこのTシャツは翔琉のものだ。
思わぬ彼シャツ姿の颯斗に、万歳三唱したくなる。
しかも裾からは、男らしいとはいえ、翔琉にとっては目の毒なすらりとした両脚が覗いていた。
朝からどきっとして、披露された下半身へ下から上へと視線が滑る。
勘弁してほしいと思いつつ、恋人だから見ていいよな。と、自己ルールに則って視姦した。
「どう、ですか?」
ベッド脇で恥ずかしそうにうしろを向いた颯斗の引き締まった臀部には、もふっとした白くて丸い尻尾が見えた。
「あ」
思わず声を上げていた。
まさか、と思う。
「ビキニって、なんだか気恥ずかしいですね。とくに前、とか……」
まさかだった。
翔琉のシャツの前身頃を隠すように、両手で引っ張っていたのは……。
「翔琉、よくこんな窮屈なものを毎日履いていますね。朝とか、大丈夫なんですか?」
顔を赤らめながら話す颯斗は、めちゃくちゃかわいい。
というか、今颯斗はなんて言ったんだろうか。
朝とか?
朝、とかって……もしかして。
最初のコメントを投稿しよう!