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ちなみ翔琉は、起きているときでしか下着は身につけない。
ストレスフリーのためである。
だからこそ、翔琉が下着をつけている朝は仕事をしている時のみ──つまり下腹部が平常のときしか身につけていない。
当然いま、この瞬間も裸族である。
日々の習慣は、完全に寝落ちする直前でも有効だったらしい。
無自覚の行動に感謝しつつも、朝から新鮮な蜜をたっぷりと精製している我が熱雄の雄ぶりに、苦笑するしかなかった。
生理現象ということもあるが、理由がそれだけではないのは確実だ。
だからこそ、翔琉の顔は自然とニヤニヤしてしまう。
「へえ。もしかして颯斗クンは、朝のご無体なアレをバニーに無理やり納めたのか」
どれどれ、とベッドに腰かけたまま颯斗へ近づき、品定めするように兎の尻尾を凝視した。
「見ないでくだい」
震える様は、まさに兎のようだ。
分かりきっていたとはいえ、颯斗のことがかわいくて、かわいくて、食べちゃいたくなる。
「いや、普通に見るだろ」
当然とばかりに主張した。
「かわいい恋人がせっかく貴重な姿をしているんだから。なあ、兎さん?」
さすがに恋人同士とはいえ、セクハラ行為はしたくない。
だが、せっかくのチャンスだ。
続けて翔琉はそう言うと、前を掴んでいた颯斗の手を優しくほどき、両手を大きく広げてとびきりの笑顔で迎え入れた。
恥じらう颯斗は、上目遣いで翔琉を見つめる。
なにか言いたそうな目だ。
「……だって、俺へのお土産だって、言うから……やっぱり嬉しい、じゃないですか」
吸い寄せられるように、颯斗自ら腕のなかへ捉われにやってきた。
理性と本能の天秤があっという間に片側へと大きく傾く。
「昨日が八月二日で、パンツの日であって、でもバニーの日でもあって、それで今日はハチミツの日だって……」
颯斗を優しく抱きしめ、一言ひとことに耳を傾けながら、うんうんと大きく頷いた。
互いの熱がゼロ距離であることは、この際触れないようにする。
だが──。
「ハチミツ、じゃないですけれど……お互いの、もうぬるぬるになっちゃいました、ね?」
張り出た翔琉の先端から、とろりとした白色の蜜を颯斗は掬いとると、ぺろりと舐めた。
途端、翔琉はロックオンされてしまう。
「颯斗」
小悪魔バニーで誘惑してくるけしからん恋人の名を、残り少なの理性で声低く呼んだ。
びくんと、パンツを履いている主の動きに合わせて白い尻尾も跳ねた。
かわいい。
思わず息を呑む。
ああ、朝からダメだ。
いや、颯斗と再会したときからダメだ。
違うな。
颯斗と出逢ったときから、翔琉はダメ人間だったんだ。
だから。
「──悪いが、俺が帰国している間は毎日、パンツの日で、ハニーの日で、ハチミツの日だからな。つまりこれから颯斗を抱く。朝も夜もなく颯斗をめちゃくちゃ抱いて、二ヵ月分、いや一生分抱きつぶすからそのつもりでいてくれ」
颯斗の返事を待つことなく、こうして翔琉は日本へいる間、本当にめちゃくちゃ抱きつぶした。
ちなみにバニーパンツの行方だが、翔琉がめちゃくちゃ颯斗を抱いたせいで、あっけなくその寿命は終わりを遂げた。
なお、使用方法に関しては詮索してはならない。
妄想は可。
二〇二二年夏、パンツの日から始まった二人の甘く激しい束の間の逢瀬であった。
END
※次のページからは、某テレビ局の一日がかりで開催されたチャリティ番組に触発され(むしろ見ながら)書いた、オメガバ設定龍ヶ崎家のお話が始まります。
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