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「パパ、めちゃくちゃ颯斗の顔、テレビに映ってたよ?」
大きなグレーの瞳を真ん丸にしながら碧翔が言った。
どうやら二人がテレビに映っているのを、ドア挟んで向こう側からリアルタイムで観賞していたようだ。
「いいんだ。牽制のつもりだから」
「それより今、テレビでは二人が消えてしまったことでだいぶ騒然としてますよ」
企むような翔琉の表情に、颯空が冷静に事実を伝えてくる。
「仕方ないだろう。出たくもない番組で、逢いたい人に逢いに行けって言われたんだから」
「翔琉、言い方っ」
翔琉の胸に抱かれたままの颯斗が、間髪入れずに注意する。
「俺にとって、いつだって【会いたい】と思う人間はこの世でただひとりだけだ」
「わかってますよ。だけど、子どもたちのいる前でラブシーンをはじめないでください」
すかさず颯空が棒読みで突っ込んだ。
「久しぶりの再会なんだから仕方ないだろう。ハリウッドから直帰の前に、チャリティ番組に出ろと言われたから」
「母様が抑制剤飲んでいるからこれ以上家族は増えませんけれど、飲んでなかったらあと何人兄妹が増えていたことか」
あけすけな颯空の言葉に、颯斗は卒倒しそうになる。
将来のアルファ候補とはいえ、そちらの方面の知識が過ぎる。
我が子ながら颯斗は震えてしまう。
「そうだな。発情期セッ……」
「あ! あ! あ!」
慌てて大声を出しながら颯斗は翔琉の手を両手で塞ぐ。
「ダメですから。翔琉、子どもたちの前で変なことは絶対に言わないでください!」
いとも簡単に翔琉は颯斗の手を剥がすと、しれっとした口調でなおも続けた。
「いいですか。俺は自立したオメガになりたいので、発情期を抑えるために抑制剤を飲んでいるんです。決して子どもを望まないわけではないですよ」
言い終わるか終わらないかのタイミングで、ぎらり翔琉の瞳が光を放った。
冷や汗がたらり、背筋を伝う。
「──ということは、まだまだ発情期セ」
「だーかーらー!」
ふたたび翔琉の口許を塞ぐと、翔琉は不本意だとばかりに怪訝そうな顔をしてみせた。
「だから大丈夫だって言ったのに」
ぽつりと独り言のように碧翔が洩らす。
「ということで、これからパパと颯斗は仲良くするらしいので、二人がめちゃくちゃにした二十四時間〇レビの行く末をリビングでそれぞれ見届けようね」
ある一定の言葉を語気強めながら、めずらしく碧翔は長男力を発揮し、兄妹をリビングへ誘導した。
「俺たちの子どもは察しがいいな。天才か?」
子どもたちの後ろ姿を見送った翔琉は、感心するように呟いた。
「天才か、じゃありませんよ」
もう少しでいかがわしい言葉を発してしまいそうな翔琉に、ひとつデコピンを軽く喰らわせる。
「痛い」
「手加減してますけど」
「そうだな。発情も抑制剤で加減してるしな」
「……は?」
思わず大声が出しまう。
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