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「相思相愛ということだな」
颯斗が重く感じないようにさらりと本音を告げた。
途端、颯斗はわかりやすく顔全体を赤くする。
ああ、今すぐ颯斗を抱きつぶしたい……が、今はダメだ。
作戦が成功するまではお預けにしなければ。
「だからまずは、再会のキスをしよう」
これくらいだったら許されるだろう、と自分に言い訳し、颯斗の顎を掴み上を向かせた。
とろんとした颯斗の瞳に、キス以上のことをしたくなる。
ぐっと我慢しながら、瑞々しく潤う唇を味わうように深く接吻けた。
この二か月、愛欲に飢えていた翔琉と颯斗は、あっという間にキスで蕩けていく。
もぞもぞと下腹部を動かし始めた颯斗に、わざと翔琉は「おや?」という顔をしてみせる。
困ったように眉を寄せた颯斗に、きっと独りでもしていないのだろうことが予想できた。
静かに翔琉は、ほくそ笑む。
「……シャワー、まだ浴びてないんですけど」
思った通りの言葉を口にした颯斗に、残念がるふりしてバスルーム行きを勧めた。
いつもだったらその後を追うように着いていく翔琉に、すんなり解放されたことにさすがの颯斗も訝しむ。
翔琉の背中へ鋭い視線が突き刺さった。
実はこれも立派な作戦のうちだ。
なんたって今日は一年に一度しか来ない、八月二日……。
そう、今日八月二日は──「パンツの日」なのだから。
何年か前、紫澤に入れ知恵された颯斗にあらぬパンツの妄想をされていた頃から、いつかパンツでお返しをしようと心に決め、苦節云年。
ようやくその日が令和のこの日にやってきたのだ。
今しがた手荷物として引いてきたグローブ・トロッターの鍵を嬉々として開け、中からファンシーな包装をされた例のモノを取り出した。
一応、メイドインUSA、ハリウッドでの特注品だ。
喜んでくれるといいのだが。
ひとり包装紙を手に「多分いけるはずだ」と気合を入れると、翔琉はバスルームへと向かった。
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