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『そうですね、わかりました。ビジネスだというのなら、弊社もたくさん龍ヶ崎さんの恩恵に預っておりますからねえ……』
紫澤が社長を務める会社は商社ということもあり、販売する製品の広告塔を翔琉が間接的に担っていたりもするのだ。
「ということは、」
『高遠くん、一ヵ月あれば仕事は引継ぎできそうですか?』
ちょうど大口の仕事が終わったばかりだ。
返事をしようとしたところで、ずんとまた大きな波が全身へ拡がるように突き上げられた。
「……ぁ」
快感に支配され、思うように言葉が出ない。
「大丈夫だと言っている」
『僕は龍ヶ崎さんじゃなくて、高遠くんに訊いてるのですが』
「颯斗はいま、忙しい。俺を愛するのに」
少しも恥ずかしげなく翔琉は言い放った。
かえって、颯斗のほうが紅くなる。
「ちなみに異動したらすぐに、颯斗の発情休暇と産休の手続きをしてくれ」
続けられた未来の予定に、颯斗はさらに顔を紅くした。
言葉だけではなく、物理的な快感によるものもあったのだが。
どういう意味、と翔琉へ視線で問うと音を立てずに唇へキスされた。
不意打ちに胸がきゅんとする。
同時に、颯斗の身体へ留まっている翔琉を肉襞がぎゅうぎゅうに押し潰し、小さく唸り声を洩らした。
ぐんと翔琉の雄が大きく育つ。
翔琉も感じているのだと知ると、颯斗からも意地悪したくなる。
『え? ナンデスカ、その予定。そこに高遠君の意志はあるんですか?』
「あるに決まってるだろ。颯斗は俺と離れたくないんだ。付き合いが長いんだから、いい加減察しろ」
『わかりました。ここまで付き合いが長くなってしまうと、親戚みたいな扱いですからね。異動願いと、休暇、社長権限で受理しましょう』
「恩に着る。ではそういうことで」
相手の返事を待つことなく電話を切ると、鬼気迫るオーラでベッドに戻された。
見つめ合って、翔琉のフェロモンを感じて、発情期でもないのにぶわりと全身が総毛立つ。
おかしい。
翔琉を咥え込んでいた最奥も、劣情証以外のもので泉のように湧き立つように潤んでいくのがわかる。
抑制剤を欠かさずに飲んでいるというのに。
警戒しながら翔琉を見上げると、意地悪そうに笑んでいた。
綺麗なグレーの瞳の奥に激情を灯しながら。
「──颯斗クンは、種付けをしてほしいようだな」
首を左右に激しく振って応えるが、身体は素直だ。
翔琉を求めている。
求めているから、勝手に口が動いていた。
いつもだったら絶対に言わないだろう陳腐なセリフを。
「翔琉の、俺の奥に……たっぷり注いでください」
「よく言えたな」
大きくて暖かな手がくしゃりと颯斗の頭を撫でると、嬉々として抽挿を再開した。
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