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とにかく翔琉にそれからめちゃくちゃ抱かれまくった。
そして、隅々まで愛されてしまった。
そのせいで異動後の休暇どころか、紫澤への電話直後から有給を一週間たっぷり使ってしまった。
でも、不思議と後悔はない。
それどころか全身が充たされていく感覚が、とても幸せだった。
運命の番とはそういうことも含め、合致するのだろう。
抑制剤を飲んでいるのに突然変異で発情してしまったのは、番に逢えなかった淋しさやストレスから来るものだろう。オンラインリモートで診察を受けた際に、そう医師が話していた。
子どもたちは──というと、翔琉が久我原家へいつの間にかお願いをしていたらしい。申し訳なさが大半だったが、桜雅たちにも双子と同い年の子どもがいるから、少しだけ安心した。
やっとのことで発情期から抜けた颯斗は、子どもたちを揃って明日久我原家へ迎えにいく。
まるきり二人だけの時間は、あと僅かだ。
子どもたちには悪いけれど、もう少しだけ翔琉と二人きでいたいなあと思う。
のぼせ上がるほどの濃厚なバスルームタイムを過ごし、二人同じシャンプーの匂いを漂わせるのも久しぶりで、なんだか懐かしくなって少し泣きそうになった。
少しのぼせたみたいだ、なんて言って独りで泣こうとしたけれど、そんなことを言ってしまったから翔琉が心配してお姫様抱っこでベッドルームまで連れて来てくれた。
泣けなかった颯斗は、ベッド上うつ伏せで微睡むふりをして滲む目尻のものをそっと枕元に押しつける。
隣りに寝転ぶ翔琉には気がつかないように。
不意に、そっと翔琉がすべらかな脚を無言で絡めてくる。
すりすりと脚の甲を押しつけられ、散々湧き立ちたはずの下腹部がぞくりと蠢いた。
枕に押しつけたままの唇をぎゅっと引き結び、もう少しだけ恋人の気分で翔琉を独り占めしたいと乞い願う。
ダメな親でごめん。
心のなかで子どもたちに謝った。
だから唐突に聴こえた謝罪の言葉が、つい颯斗が心の内からこぼれたものではないかと焦る。
「──すまなかった」
涙の痕を隠すことも気にせずに、颯斗は顔を上げた。
グレーの瞳と視線が合う。
口を半開きにし、ぐしゃぐしゃの目許の不細工な顔のまま、きっと見つめていたのかもしれない。
翔琉のひとさし指が、目尻からこぼれ落ちた軌跡を辿るようにやさしく拭った。
「ワンオペにさせてしまったことも、強引にアメリカに連れて行くことも、そして行かないでと言わせてしまったことも」
すまなかった、にかけられた翔琉の本音が吐露される。
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