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「明日、子どもたち迎えに行くのに支障をきたしたら大変ですから」
一応、形だけは拒否しておく。
数分後には陥落してしまうことは明らかだったが。
「すでに下腹部を熱くさせているが、鎮まるまで何もせずに待つのか?」
翔琉の大きな手は止まることなく、勃ちあがりかけた颯斗の根元から先端へ向けて何度もスライドさせる。
ぞくぞくと足元から這い上がるような快感を、ぎゅっとつま先を丸めてやり過ごす。
「俺のは、もう待てそうにないが」
腹部につきそうなほどいきり立ったそれを惜しみなく見せつけ、颯斗の手を取り握らせる。
「翔琉、あなた本当は俺より年若いんじゃないんですか? 絶倫お化けですよ。なに食べたらそんなに盛れるんですか?」
反論する颯斗は、すっかり翔琉のペースに乗せられていた。
やり方は少し、いや、だいぶ卑猥ではあったが彼なりに颯斗のことを気遣ってのことだろうことは、もう長い付き合いでわかっていた。
だいぶ、やり方は特殊だけれど。
「──よかった」
安堵した翔琉の声に、翔琉ははっとする。
「いつだって好きな人には笑顔でいてほしいんだ。大好きだよ──颯斗」
不意打ちの告白に、颯斗の心と下腹部は一気に熱を灯した。
「俺だって」
素直にはっきりと翔琉へ意志が返せるようになった颯斗は、逢いたい人がいま、隣りにいる幸せを大きく嚙み締める。
逢いに来てくれた翔琉への、感謝の気持ちとともに。
余談だが、子どもたちを久我原家へ迎えに行った帰りの車内。
後部座席へ乗っていた双子が、なぜかそわそわしていた。
見兼ねた助手席の颯斗が声をかけると、「あー」と気まずそうな顔をしてアイコンタクトを取る二人。
「そういえば、その『あー』ってなんだったんだよ?」
既視感を覚えた颯斗は、とうとう今日、思い切ってこのタイミングで二人にその意味を訊いてみることにした。
すると口を開いたのは双子ではなく、ドライバーを務めている翔琉のほうだった。
「その節は協力してくれて助かった。四人目が産まれたらまた頼むぞ、双子たち」
意味深にそういうと、双子は「あー、発情期でしたしね。そうですよね」と大人の反応を見せたのであった。
後日、米国へ渡った颯斗が翔琉の宣告通り第四子を懐妊したかどうかは、また別のエピソードにて。
END
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