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2022年ポッキーの日。
「翔琉、今日ってポッキーの日らしいですよ」
バイト後の突然の呼び出しに応じた颯斗は、ドアが開くなりレジ袋を家主の前に突き出した。
「なんだこれは?」
きょとんとレジ袋を見下ろす翔琉は、いつもよりラフな姿だ。
「だからポッキーですって」
「甘いものが苦手なのに買ってきたのか?」
怪訝そう翔琉が応える。
無理もない。
「いえ、花凛ちゃんに持たされました。だから実際、俺も中身はよくわかりません。なんでも、ポッキーゲームをやるためにってことらしいです」
「ポッキーゲーム?」
ますます翔琉の眉間の皺が深くなる。
ぎろりと光るグレーの瞳がとびきり機嫌悪そうだ。
「はい。俺もやったことないんですけど、端と端を咥えて、どっちが最後まで食べられるか、的なものらしいです」
「は? お前の友達とやらは、それを颯斗にやらせるために持たせたのか?」
「そうみたいです」
颯斗の返答に、しばし翔琉は難しい顔して黙る。
「まあ、いい。とりあえず中へ入れ」
「おじゃまします」
いつもの通り玄関で靴を脱ぎ、靴の方向を並べ直すと、そのまま翔琉の後に続き、リビングへ向かった。
「で、どれくらい貰ったんだ?」
「えっと、ポッキーと、緑の大人ポッキーと、白いポッキーと、イチゴポッキーと、トッポとプリッツです」
リビングのテーブルの上に、颯斗はもらったレジ袋の中身をひとつずつ取り出していく。
「随分もらったな」
呆れを通り越して、感心した様子で翔琉は並べられたカラフルな箱の内のひとつを手に取る。
それからべりべりと封を切って、懐かしそうに中からポッキーを一本取り出した。
すると、「ほら」と言ってそれを口に咥えた。
「え?! 俺たちポッキーゲームやるんですか?!」
「だってせっかくお膳立てしてくれたんだから、やるしかないだろ。颯斗も食べられるようにプリッツにしてみたが」
うん、と颯斗のほうへプリッツを突き出す翔琉。
「え、え、え」
「ほら早くしろ」
促されて、顔を赤らめながらその先端を口腔内に含む。
「思ったより短いんですけど……」
照れながらそう告げると、準備なく翔琉がぱくっとその殆どを口にし、あっという間に颯斗の唇へとたどり着いてしまった。
それからチュッと唇に改めてキスをされ、残されたプリッツを翔琉の舌がくいっと中へ押し込む。
「わ!」
なんかよくわからないけど、めちゃくちゃエロい……このゲーム!
そう思った颯斗をよそに、平然と翔琉は自身の口腔内に納まったプリッツをむしゃむしゃと咀嚼していく。
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