5年後の龍ヶ崎さんと颯斗氏♡(オメガバver.)

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5年後の龍ヶ崎さんと颯斗氏♡(オメガバver.)

 夜の十一時。  広々としたサニタリールームで、颯斗は本日最初の洗濯物を予定よりも一時間早く終えていた。  いつもであれば子どもたちを寝かしつけたあとに開始するそれを前倒しできたのは、間違いなく夫である翔琉の協力あってのことだろう。  今夜だってそうだ。  海外から帰国したばかりで疲れているだろうに、翔琉は「子どもたちが眠そうだから」と双子と末娘の寝かしつけに行ってしまったのである。  おかげで颯斗は、今こうしてやり残した家事へ予定よりも早く着手することができているのだが。 つき合いはじめて九年、結婚して早六年。 翔琉に愛され続けた結果、彼似の(翔琉自身は碧翔が颯斗にそっくりだと話すが)可愛い子どもを、颯斗は運良く三人授かることができた。 その事実だけでも嬉しいのに、翔琉はつき合いはじめたときから変わらず、ずっと颯斗を第一に考えてくれる。  そして子煩悩でもあるので、仕事がオフのときはこうして子どもたちと過ごす時間も大切にし、日頃ワンオペで頑張っている颯斗を気遣ってか、家にいるときはなんでもひとりで家事育児をこなしてしまうのだ。  ――結婚前からも分かっていたけれど、本当に翔琉はスパダリなんだよなあ。  そして何年経っても俺はその背中に追いつくことができないんだろうな、という同じ男として永遠の憧れと敗北感も、同時にその背に垣間見えるのだ。  そんなふうに颯斗が思っているなんて知ったら、きっと翔琉はバカだなあなんて言いそうだけれど。 「どうやったら翔琉みたいに、仕事をバリバリしながらも器用にあれこれこなすことができるんだろう……」  独り言ちながら、ドラム式の洗濯機の洗剤残量を確認していると、ふいに後方からドアの開く気配がして、周囲にふわりとムスクの香りが漂った。  この香りだけで誰がそこへ立っているのかが、すぐに分かってしまう。  ――俺の、大好きな人だ。 「あ、寝かしつけありがとうございました。これからお風呂ですか? 二度目の洗濯物を廻したらすぐに外へ出ますから」 途端に上昇する頬の温度に気づかないふりをして、颯斗は一方的につらつらと喋り続けると、途中、後方からぎゅっと強く抱き竦められる。 「……え?」  どれだけ一緒の月日を重ねても、不意打ちのように抱き締められるこの瞬間は、いつだって恋愛初心者のようにドキドキする。    久しぶりに翔琉を感じるときは尚更だ。
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