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「洗濯なんてクリーニングサービス利用していいと、そうずっと言っているだろう?」
甘やかな艶のある低い声が、颯斗の耳許で囁いた。
「……ですが」
洗濯に関しては双子を出産して以降、颯斗の負担が少しでも減らせるのであれば、と翔琉から提案されていたサービスの一つに挙がっていた。
けれど、汚れものの多い子どもたちのものを都度クリーニングに出すには、あまりにもコスパが悪すぎるし、なにより子どもたち以外の洗濯物を……とくに翔琉の洗濯物を他人が触れるかもしれないという可能性を考えるだけで、オメガである颯斗には妬心が芽生えてしまう。
――こんなあさましいことなんて翔琉には言えない。それに、翔琉の匂いのするものを他人へ渡すくらいなら、全部巣作りの材料にしたいくらいだけど……。
「颯斗、一緒に風呂へ入ろう。颯斗が不足しているんだ」
颯斗の了承を得る間もなく、翔琉はシャツのボタンを熱心に上から外しにかかる。
ドキドキが止まらない。
颯斗だってそうだ。
いや、むしろオメガの颯斗のほうが翔琉不足でおかしくなりそうだ。
翔琉の匂いを嗅いだだけで、すでに下半身は淫乱に疼きはじめているのだから。
「ちょっと待ってください。まだ二度目の洗濯物を廻していなくて」
口にすることで颯斗は理性を保とうとした。
しかし翔琉はそんな颯斗の思惑など、とうてい無視してマイペースに事を進めていく。
「服、邪魔だから脱いでしまおう」
シャツとその下に来ていたアンダーシャツを、翔琉はひとまとめに勢いよく脱がせる。
あっという間に貧弱な颯斗の上半身が露わになって、その光景を見下ろす翔琉の喉がごくりと嚥下するのがわかった。
そして翔琉の下腹部も、布越しに熱くなっているのを臀部に感じてしまう。
あ、と颯斗は息を呑む。
背後の翔琉はそうして無言のまま、自身の衣類をその場に脱ぎ捨てていく。
衝動的に颯斗はそれを拾うと、自身の鼻腔に充てがう。
――翔琉の匂い。いい匂い。好き、すき。大好き。この服も巣作りの仲間入りさせたい。
密かに興奮していると、突然それは颯斗の手から奪われてしまった。
「……なんで取り上げるんですか!」
悲鳴のように抗議の声を上げると、彫像のように鍛え上げられた全裸の翔琉が自身の衣類を手に、怪訝そうに颯斗を見つめていた。
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