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「なんで、って。オメガの特性上仕方ないのかもしれないが、生身の俺がいるのに、衣類に沁みついた俺の匂いに執着するなんて許せるわけがないだろう?」
覚悟はいいか? の「か?」を口にした時点で颯斗は手早くデニムパンツも下着も脱がされてしまう。
そしていつものように軽々と横抱きされると、そのままバスルームへと連行される。
「まさか混浴するんですか?!」
シャワーチェアに颯斗を座らせると、翔琉は律儀に湯温を確認してから、少しずつ爪先からシャワーをかけていく。
「当たり前だ。バスルームだったら、たとえ少しくらい騒いだとしても問題はないからな」
さも当たり前かのように、翔琉はしれっとした表情で応えた。
「……騒いだ、って」
マーキングの正体を勝手に独り想像して、颯斗は頬を赤らめる。
「颯斗、もしかして今、ひとりでイヤらしい妄想してただろう?」
どこか楽しんでいるような口調で指摘された颯斗は、身の内に秘めていたあさましい感情を暴かれた思いがして、全身に冷や汗背に滲んだ。
翔琉が目の前のボディソープのボトルへ手を伸ばし、無意識颯斗はそれを視線で追っていた。
「して、ないですよ」
そうして掌いっぱいに拡げられたソープを、翔琉はまるで颯斗の動揺を暴くかのように胸元へ塗り拡げられていく。
「ゃ、あっ」
びくんと颯斗の肩が揺れて、意図しない声を上げてしまった。
「颯斗はこんなところを洗っただけで、甘い声を出すなんてけしからん。とうてい、子どもたちには聴かせられないな」
あきらかに楽しんでいるような、意地悪そうな声の翔琉が、胸の尖りから下腹──へは降りず、首と腕などに移動し、ただ本当に洗身だけをする。
「今日は、日頃ワンオペで家のことを頑張っている颯斗に、感謝の気持ちを込めて、俺から労いのご奉仕をしようとしたのだが……」
ふむ、と背後から訝しげに颯斗の身体を覗き込んできた。
「わっ!」
胸を弄られただけでなく、熱視線を向けられた颯斗の下腹部は、たちまち雲行きが怪しくなってくる。
翔琉からの労いってなに、と長く連れ添い学習能力を身につけた颯斗は、これ以上なく困惑した。
もじ、と密かに大腿を擦り合わていると、滑るように上から降りてきた翔琉の視線が下腹部で静止する。
ふと背後に硬い熱の感触が、ひたりと充てがわれるのを感じた。
わ、と颯斗は瞠目する。
しかし翔琉は自身の雄のことには一切触れずに、中断していた洗身の手を再開した。
マジかよ、と颯斗は困惑する。
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