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何も知らずシャワーを浴びる颯斗の元へ、あらかじめ準備されていた着替えと包みをそっとすり替える。
翔琉が手配したものを身につけた颯斗を妄想し、ドキドキとワクワクが心のなかで暴走を始めた。
「パンツの日」最高だな、と知らない内にニヤニヤし出した翔琉は、冷静さを取り戻すため、キッチンの換気扇下でJPSを口に咥える。
いつの間にか頬が緩んでいく。
きっと世界でいちばんだらしない顔をしているだろう。
同時に、顔どころか下腹部も自然と熱くなっていく。
「十代のガキか」
JPSを強く肺へ送り込みながら自嘲する。
実は飛行機に乗る前から、それを身につける颯斗を想像しただけで、己の熱雄が秒で勃ちあがりかけていたのだ。
十代から派手に遊んでいたアラサーの翔琉にとって、妄想で勃つなどありえない体験だった。
「でももう少し我慢してくれよ」そう情けなく下腹部へ呼び掛け、翔琉は気をそらすように限界ギリギリまで咥えたタバコを吸いあげる。
直後のことだ。
「翔琉! これはなんですか!?」
バスルームから思った通りの叫び声が聴こえてきた。
ニヤリと翔琉は口の端をあげる。
作戦通りだ。
帰宅してキス止まりで我慢した甲斐があった。
「……どうした、颯斗?」
図ったのは翔琉だったが、知らないフリして大仰にバスルームへ駆けつけた。
「こ、これは……?」
全裸になっていることすら忘れているのだろう。興奮した面持ちの颯斗が、身体を隠すことなく、包み紙の中身を広げながら大きく手を震わせていた。
「俺からの土産だ」
考える隙間を与えないようしれっと翔琉は告げた。
「……土産、って……これ、うさ耳と……尻尾のついたパンツと……」
「そうだ」
ひどく混乱した颯斗を前に、翔琉はにこりと視聴率百二十宇パーセントのスマイルを披露した。
日頃、俳優龍ヶ崎翔琉として恋人の前に立つことはないのだが、今日だけは特別だ。
なにせ、八月二日のミッションを無事遂行せねばならぬのだから。
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