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「出逢ったときから俺は、翔琉に甘えっぱなしですよ」
翔琉の頭部を撫でながら、颯斗は目を細めて笑った。
「だったら今すぐ、もっと俺に甘えてみせてくれ」
頭を預けたまま、なんてことのないように翔琉は言った。
「……え」
「え、じゃない。甘えてみてくれよ。何度も言うが、今の俺は颯斗不足なんだ。颯斗を甘やかすことこそが、俺の幸せで生きがいなんだ」
だから……と懇願するように想いを吐露した翔琉に、颯斗の鼓動は大きく脈打った。
──それって、めちゃくちゃ翔琉……俺のこと、好きすぎるんじゃないの?
改めて自覚してしまった颯斗は、途端に気恥ずかしさを覚えてしまう。
それからまるで発情期でも迎えたかのように、かあっと全身がのぼせあがって、頬が上気していく。
「颯斗? なんだか首が突然熱くなったような気がするが、身体は大丈夫か?」
気遣わしげに翔琉が問うてくるが、次第に頭もぼうっとしてきて、なにも考えられなくなってしまう。
「あつい。からだ、あつい」
うわ言のように颯斗はそう告げると、
「……まさか、発情期か?」
と、翔琉は瞬時に颯斗の首筋から顔を上げ、状態の確認を問うた。
発情期? と颯斗は靄のかかった頭で反芻する。
──発情期はまだ先だったはずなのに。おかしいなあ……。
みるみる内に全身から力が抜けていき、今度は颯斗のほうからしなだれかかるように、翔琉の胸へ顔を埋めていた。
同じボディソープの香りが心地好くて、さらにとろんとする。
──あれ、これはボディソープじゃなくて、翔琉のフェロモンの匂い?
「ダァの匂い、すごく気持ちいい」
翔琉の香りに誘引されたかのごとく、甘ったるい口調で発情期のときしか口にしない呼び名で伴侶を呼ぶ。
たちまち颯斗の臀部でステイした翔琉の熱雄が、ぎゅんと嵩を増す。
ちなみに颯斗の言う「ダァ」とは、ダーリンの略称で、ベッドでぐずぐずに蕩けて、我を忘れながら可愛く翔琉へとその熱雄欲しさに、おねだりするときに口にする愛称だ。
「……颯斗、すまない」
「へ?」
すでに発情と思われる症状で、ぐずぐずになっていた颯斗は目元を潤ませながら、欲の灯った瞳で翔琉を見上げた。
「今からめちゃくちゃ抱く。とりあえず浴室で抱く。それからベッドルームでもさらにいっぱい抱く。明日は颯斗、発情休暇決定だな」
にやりとグレーの瞳を光らせると、上機嫌に颯斗を向かい合わせに抱き上げた。
「やっぱり俺って運がいいな。突然の発情で、颯斗不足を解消できるんだから」
ニヤニヤが止まらない翔琉にその後、颯斗は発情が終わるまで何度も何度もたっぷり愛されて、発情を終えてもしばらくは甘い声での「ダァ」呼びが抜けきれなかったお話は、またどこかで。
END
颯斗「今夜は日本中に大寒波が訪れているようなので、くれぐれもお風邪を召さないようにあったかくしてお過ごしください」
翔琉「俺たちも今夜、身を寄せ合っていちゃいちゃ身体が温まることをする予定だもんな?」
颯斗「……もう、なんてことを言うんですか!」
結局、子どもたちがぐずって親子川の字どころか五人並んで、仲良くほっこり休みました。
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