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小さくなっちゃった?!!
た、大変なことになってしまった。
「驚いた顔して、どうしたんだ?」
不思議そうな顔した翔琉が、ベッドの上で驚愕した颯斗を見つめてくる。
「あっ、あの……!」
突然のことだったので颯斗も動揺が隠しきれなかった。
だって、
だって、
だって!!
「あれ、俺……なんだか少し縮んでる?」
自身の手足へ怪訝そうに視線を彷徨わせた翔琉は、最終的に透き通ったグレーの瞳を目の前の颯斗に向けてくる。
「……縮んだ、というかその、」
ぎゅっと颯斗は拳を握り、今にも震えだしそうな自身を鼓舞した。
だって、
だって、
だって!!!!
「すみません翔琉、ギュッとしてもいいですか?!」
いつもであれば絶対に颯斗から申し出ないような誘いに、翔琉はあからさまに嬉しそうな表情を浮かべた。
「……いいに決まってるだろ。というか、ギュッとする以外でもなんでもしていいぞ」
「いや、さすがにそれは俺の良心が咎められますが……だって今の翔琉、」
硬く一度唇を引き結んだ颯斗は、悔しそうに眉を寄せると、躊躇いがちに口を開けた。
「今の翔琉の見た目、なんでか知りませんが、今の俺より、かなり若返っていますよ?」
「……あ、だからか。なんだか少し縮んだような感覚があったが」
颯斗の告白に、翔琉は平然としていた。
「ていうか、反応普通すぎますっ!」
「まあ、創作の世界はいつ何時、なにが起きるかわからないからな」
「いや、なにか起きたら俺は困りますよ」
「いいじゃないか、今回は俺の身に起きたことだし、若い俺とイチャイチャするのも、またいい思い出だと思うけどな?」
「若いと言っても、一体今の翔琉の見た目は何歳まで若返ったんですか?」
濃厚にまぐわった直後、隣に眠る翔琉を目にしたら、だいぶ若い……けれど相変わらずめちゃくちゃ男前の龍ヶ崎翔琉がそこにいたのだから、思わず颯斗はどきっとしてしまう。
同級生にいたら、間違いなくモテまくってるヤツだ。
いや、現に俳優をやっている今だってめちゃくちゃモテているのだから、若い頃もモテるのは当たり前だけれど。
「とりあえず翔琉、鏡見てきてくださいよ」
颯斗は翔琉の肩を叩くと、姿見のほうを指さした。
「若いって言ったって、どうせ十歳くらい戻ったくらいだろ?」
可愛い恋人に指示されたら無視できない翔琉は、重い腰を上げてベッドから立ち上がる。
そして姿見の前に立つと、「あー」と納得したような声を出した。
「なるほどな。俺、今中学生くらいのときの見た目に戻ったんだ」
「え? 中学生くらいのときの見た目?! ウソ! 高校生じゃなくて?!」
「そうだ。でもこれは、予想以上に若返りすぎたな……」
まずったな、とここへきてようやく翔琉はひどく困惑した表情を浮かべた。
「でもこの頃にはすでに
童貞を──」
翔琉が言いかけて、颯斗は「あ! あ! あ!」と大声で自主規制を促す。
「だからと言っても、今の中学生翔琉と俺がイチャイチャするのはなしです! なし!!」
頑なに颯斗は拒否すると、翔琉は「は?」と不機嫌そうにグレーの瞳を眇めた。
「でも中学生だって恋愛するし、イチャイチャくらいするだろ」
翔琉はそう告げると、先ほどまでとは打って変わって、颯斗をうっとりとした表情で見つめてきた。
「だったらこういう設定はどうだろうか。俺が生徒で、颯斗が担任の先生──もしくは、教育実習生。なあ、いい設定だと思わないか? なあ、高遠センセ?」
創作のお約束マジックで気づけば、それぞれブレザー姿とスーツ姿に変貌していた二人は、しばらく先生と生徒ごっこをめちゃくちゃに楽しんだ後、颯斗までが高校生に戻り、今度は制服同級生デートをとにかく楽しんだという。
完
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