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「へへ。今日はハッピーバレンタインなので、お仕事をいつも頑張るかっこいい『龍ヶ崎翔琉』さんにファンから愛の差し入れを届けにきました」
颯斗はそう言うなり、背負っていたデイパックから、そわそわしながら高級なパッケージの小さな正方形の包みを取り出した。
そして両手で包みを持ちかえると、すっと翔琉の目の前にそれを差し出す。
「どうぞ、こちらお収めください」
ぺこりと颯斗は頭を下げた。
その仕草がとても愛らしくて、衝動的に颯斗を強く抱きしめる。
「ちょっ、翔琉! こんなところで突然抱きしめないでくださいよ」
焦りが滲む颯斗の唇を、翔琉は強引に塞いだ。
こんなところでキスをはじめたら最後、自身のなかに灯り出した情欲が鎮火できないことくらい、翔琉も重々承知していた。
承知していたのに、颯斗がかわいすぎるせいで理性が風前の灯火となってしまう。
「……っぅ、は、ぁ、っ」
か、ける、と甘い響きの合間に、煽情的に濡れた颯斗の唇が揺れ動く。
まずい。
翔琉の脳内で警鐘が鳴る。
けれど、やめられない。
颯斗のことがほしいと、つよく全身が切望している。
「はやと」
無意識に愛おしい生き物の名前を口にしていた。
途端、二人の間になんとも形容しがたい濡れた空気が満ちる。
翔琉は貪るようなキスを一度止め、颯斗を見下ろした。
とろんとした表情の颯斗と視線が合致する。
あ、まずい。
これは完全にまずい。
今すぐにでも、隅々まで颯斗をかわいがってやりたくなってしまう。
理性がまだ保てるうちにこの場所から移動しなければ……。
そう考えているうちに、颯斗が翔琉の肩を押した。
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