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8月2日は、パンツの日のようですが2022。
龍ヶ崎翔琉は今、二ヵ月ぶりに自身の家の前へ立っていた。
できる限りの平静を装っているつもりだが、指紋認証とカードキーで解錠するその手に大きな焦りが滲む。
ドアを開ける音と同時に、奥から予想通り躊躇いがちな足音が聴こえてきた。
その足音だけでもかわいい。
いますぐにでもこの足音の持ち主へ近寄って抱きしめたい。
そう思ったが、とある作戦のため、ぐっと堪えてスキンシップを控える。
「……おかえりなさい」
恥ずかしそうに、だが嬉しそうな表情を見せ、十歳年下の恋人である高遠颯斗が出迎える。
「ただいま」
翔琉がそう返すと、颯斗は嬉しそうに目許を赤く染めた。
颯斗が高校を卒業する頃につき合い出して、早四年。
いまだ初々しい反応を見せる年若い恋人がかわいすぎて、常日頃、押し倒したい衝動に駆られている。
「思ったより早かったですね」
とにかく恋人に一刻も早く逢いたかったのだから、当然だ。
「ああ、颯斗に逢いたくて直でここへ来たからな」
今日のためにハリウッドでの撮影を巻きに巻いて、大慌てで帰国したのは内緒だ。
気にしすぎる颯斗に極力不安材料を与えたくないのは、恋人としての配慮である。
「……嬉しい、です。俺も、翔琉に逢いたくてバイト終わってすぐ来てしまいました」
つき合いたての頃だったら絶対に口にしなかったような好意に、翔琉の胸はぐっとくる。
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