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僕が予想した通り、ラーメンのその味は至福の一言であった。
体液まで絞り取ったのかと思える程、貝の旨味が滲み出たスープは、鼻に抜ける香りがたまらなく、舌の上で最上のダンスを繰り広げてくれる。
そして、それに絡まる麺もスープに心地よく絡まり、僕と野乃はしばらく無言になりながら目の前のラーメンを堪能した。
「ところで……」
ラーメンを食べきり、ヘアゴムを外した野乃は、頬杖をつきながら切り出した。
「LINEで言ってた、彼女と別れたって話は結局どうなった?」
「悪い、夢のインパクトが強烈過ぎて忘れてたよ」
「もしかしたら、旦那も飲み会キャンセルして帰ってくるかもだし、出来れば手短に頼むね。
ラーメン奢ってくれるお礼として、きっちり愚痴は聞いてあげるから」
「分かってるよ」
僕は再び苦笑すると、失恋までに至る経緯を野乃に話す。
その内容は、世間でよくある性格の不一致からくる不和だ。
そして、僕のその下らない失恋話を野乃は微笑混じりに聞いていた。
ココだけの話、僕は野乃に対して恋心を抱いていた。
今日、「失恋話」を名目に野乃を食事に誘ったのも、少しでも野乃と会話をしたかったからだ。
しかし、中学時代から抱いている僕の野乃への恋心は、4年前に彼女が他の男と結婚する事で、成就する事が出来なくなる。
今でも後悔している。
もし、僕があの時勇気を振り絞って行動していれば、僕と野乃は交際し、あわよくば結婚に至ったのではないかと。
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