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昔から栞は、今日みたいに私の変化の核心をつくことがあった。具体的な話を特にしなくても、わかり合えるような、大切な友達。
“ソウルメイト”と言っても良いくらい。
でも、陳君のことはうまく言葉にできない。
あの時彼を受け入れたのがなぜなのか、自分でもよくわからないから。
留学先というシチュエーションなのか、好意をもっているからか、全く違う理由なのか。
「また、9月には行っちゃうんだよね。その時も会えるような仲間はできたの?」
他意の無い質問に動揺した私に、栞が首を傾げた。目があったとき思わず逸らすと、反対側に顔を傾けて、栞は私をまじまじと見つめる。
「香那、聞いていい?」
「待って!…懸案事項なの。よくわからない状況で話すのは難しい」
「…なら、待ってあげてもいい。」
そう言って、口をつぐむ栞は待っているのかな?恐る恐る目を合わせると栞は言った。
「でもね、香那。今度こそ幸せになる選択をして」
「幸せになる選択?」
「そう。香那が思い描く幸せに、近づくための選択」
そんなの考えたことがない。
なんだろう?
私の思い描く幸せって。
栞は言葉を繋げた。
「私は昔、自分が我慢すればいいって思ってた。それで色々なことが、スムーズに進めば良いって。でもね、誰かを傷つけてしまっても、拒まなきゃいけないこともあったし、絶対に譲れないものもあった」
「・・・うん」
「それができるようになって、私は本当に幸せだって感じられるようになったし、結果的に周りの人にもプラスになってる気がする」
栞が言うことはわかるけれど、自分に置き換えると、まるでイメージができない。
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