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無事留学生寮に到着して、携帯が問題なく使えることも分かった。荷物の整理が一段落してから、履歴をチェックした。結構な件数のメールの中で、栞からのメールに気付いた。
後で、驚くような通信料の請求が来たら困るから、親しい子や母にはメールにしておいてと頼んであったんだ。
“香那、どうしてる?いつも一緒にいた訳じゃないけど、香那が日本にいないのは、変な感じ。”
そんな書き出しから始まって、成人式の準備のことやここ数日のニュースとかを知らせる何気ないメール。私が寂しくならないように、栞なりに気を遣ってくれてるんだろうな。最後に智也のことが、おまけみたいに書かれていた。
“年末に帰って来る予定だったのに、大雪で飛行機が飛ばなかったって。その後なかなかチケットがとれなくて、年明けの帰省になったらしいよ。神山に来たのは、7日の夜だってさ”
やっぱり、私と智也はそんな風になる運命だったんだ。
普段は思いもしないようなことを考えた。
だって、私が日本を出たのは、7日の早朝だったから。
かすりもしない、見事なすれ違い。
この2年、自分でも避けていたつもりだったけど、そんなことをしなくても会えなかったのかもしれない。
やっぱり、別れて正解。
天候にも、そう告げられているみたいだ。
そんなことを2年経っても考えているなんて、引きずっていることは明らかだけど。
好きだと言ってくれる人も、好意を匂わせて近付いてくる人もいるけれど、私の気持ちは動かない。
3年近く思いを寄せて、その後3年付き合った智也。
私にとって、特別な出会いだった。
進学先が、北海道と東京に離れ離れになると分かって、悩みに悩んで別れを決めた。智也に対する思いは変わらないけど、疑っていた訳じゃないけど、あいつに思われ続ける自信がなかった。
ダメになるくらいなら、終わらせる。思い出は褪せたとしても、汚れないから。そう思ってしまった。そして、私の思いは思い出の箱の中に、きれいに納めるはずだった。
だけど、未だに収まってくれない。
こうなったら、納まりきるまで待つしかないじゃない。
私は私の目標を達成しながら。
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