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“びっくりした?僕の信仰する宗教や育った環境はそういうところ。付き合うっていうことがない。出会ったら親に認めて貰って結婚する。それよりも、親が見つけた相手と結婚する人の方がずっと多い。  昔の友達は、ほとんどの人がもう結婚している。そんなに多くはない大学に進んだ人以外は。  日本や他の国の人達が同じでは無いことは知っているよ。僕は沢山本を読んだし、映画も見た。こちらに来て、知り合いも増えたから、フィクションの世界だけじゃ無いことも実感した。それを逆手に、アメリカ人やカナダ人、日本人の女の子と良いように遊んでる知り合いもいる。でも、僕はそんなことをしたい訳じゃ無い”  彼は、私を見つめた。 “香那だったから” “ごめん。失礼を承知の上で聞くよ?あなたが留学して、初めて会った異性が私だったわけじゃないよね?” “違う。僕はカナダの前に半年アメリカにいたんだ。ちょっと女性不信になるくらいアプローチされてた”  確かに彼のエキゾチックな雰囲気に、惹かれる人はいるかもしれない。接してみれば、知的だし紳士的だから尚更。魅力的な人だと思う。 “香那は不思議だ。日本人って言ってもぴんとこない。カナダ人でもない。そのまんま、香那は唯一の人なんだ。香那の考え方や笑顔が好きだ。ひけらかさないところも、一途なところも。芯が強いところも”  彼は私の頬に指を伸ばして触れた。微かに震えている指先は、こうして触れることに慣れているわけでは無いことがよく分かる。たぶん、勇気と決意を持って触れてくれたんだと思う。  今だけじゃ無い。  きっと、抱き締めてくれたときも、手を繋いでくれたときも。 “結婚の約束すらしていない女性と関係を深めることは許されない。でも、ただの留学生の僕が、結婚を願うくらい、香那のことが大切なんだ”  彼は、長く息を吐いて私に言った。 “香那は?僕のことをどう思ってる?”
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