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“……香那“
彼に優しく抱き締められて、私はおずおずと彼の背中に手を回した。私はこの先を知ってはいるけど、どうしたらいいかなんてわからない。
“僕がこれから香那とすることは、香那からのギフトだと思ってる。特別なギフトだ“
そう言って、彼は唇を重ねた。
“怖がらないで“
いやいや。震えてるのは私じゃない。陳威の方だと思う。
“あなたが心配なの。傷ついたり、罰せられたりしない?”
“大丈夫。僕は誓ったから”
そう言って、彼はもう一度私に唇を重ねた。
“香那の全部を知りたい”
彼は静かな声で私に言った。彼は、熱に浮かされている訳ではなかった。そのことに、私は突き動かされたみたいだった。
”全部知ってほしい。だから、陳威も教えて。あなたのこと全部”
外は凍てつくような寒さだけれど、暖かい部屋で、私たちはその日初めて肌を重ねた。
“香那も恥ずかしいだろうけど、僕も恥ずかしい。それぞれ衣類を脱いで布団に入らない?”
かわいい提案に思わず笑うと、彼にお願いだからと言われて、そうすることにした。先に彼が着替えて、私も衣服を脱いで彼の隣に潜り込んだ。
彼は宝物を扱うように、優しく丁寧に触れてくれた。長い時間指や手のひらで私の肌を撫でる。それが心地よくて、私は洩れる息をこらえるのが苦しいくらい。
“辛いの?”
涙目の私にそう尋ねる彼に、どう答えてよいのかわからない。
“辛くもないし、怖くもない”
“じゃ、どうして泣きそうなの?”
答えようとしたら、彼の手の動きに堪えきれず息が洩れてしまった。理由がわかったのか、彼は更に丁寧に手や唇で触れた。
“わかったよ。香那がなんで泣きそうか。僕も同じだ。心地よくて、幸せで泣きそうだ。だから、香那は安心して。僕は傷つかないし、誰にも傷つけられない”
そう言って、体をゆっくりと繋げてくれた。
彼の手が私の頬に触れたから、そっと瞼を上げた。彼が優しく口付ける。
こんなに静かな交わりがあるんだ。
でも、うねるような、込み上げるような心地よさに私は意識が遠退きそうなくらい。
ゆっくりと体を揺らす彼に、思わず手を伸ばすと、彼がその手を握りしめてくれた。
たぶん、彼は涙を流していた。
その手が濡れていたから。私は、愛しさに彼の頭を抱えると、そっと抱き締めた。
「香那…愛してる」
彼は何度もそう伝えてくれた。
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