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“1ヶ月くらい、会えなくなる。大事な期間なんだ。本当は会えないこともないけれど、色々制約があるから”
“わかった。待ってるね”
4月の半ばにさしかかろうとした頃のことだった。彼らにとって、とても大切な期間だってわかってる。
私の滞在期間を考えれば、1ヶ月会えないのはとても惜しいこと。でも、学内で偶然見掛けたし、メッセージのやり取りもできた。遠距離恋愛の練習だと思って乗りきることにした。
久しぶりに会えた日、午前の講義が終わって二人で大学の棟を出て昼食のために移動しようとしたときだった。彼が顔を赤らめて“ギフトの時間が欲しい”とおねだりしてきた。
恥ずかしく思う前に、思わず笑みがこぼれてしまった。
なんだか、かわいらしく思えて。
“泊まりに来ても大丈夫だよ?”
夕方までに一緒に買い物を済ませて、私の部屋でゆっくり過ごせば良いと考えていると、彼の手に腕を取られていた。人前でこんな風に触れるなんて、驚いた。
“香那はもう講義はないでしょ?”
“うん。でも陳威はあるでしょ?一緒にランチに行くんじゃないの?”
“今日はおやすみ”
“休講ってこと?”
“おやすみだよ?”
大丈夫かな?サボるなんて彼らしくない。
“事前にお願いしてある。今日は香那と一緒にいたい”
斜め上から私を見て言う彼に、申し訳なさを越えるくらいの嬉しさが込み上げてしまった。
“ありがとう。でも、一緒に居られるのは嬉しいけど、休むなんて良くないでしょ?”
“休む訳じゃない。会えない間、余分に頑張ったから、今日はお休みなんだ”
彼が計画的にそうしたのなら、それで良いと思った。
屋台併設の簡易礼拝所で、彼がお祈りを済ませてから簡単な昼食を食べた。やはり併設の店舗で、夕食の食材を購入して私の部屋に向かった。
“次の礼拝の準備をするまで、ずっと香那に触れていたい”
耐えかねたように私にキスをする陳威は、珍しく余裕が無い。
“…どうしたの?”
“香那に夢中なだけ。ずっと会いたかったし、触れたかった”
答えたあと、すぐに唇を重ねる彼が私を抱きかかえてベッドに運ぶ。
“こんな風になるなんて、僕も思わなかった。・・・香那、怖い?”
私は首を振って、彼を抱き締めた。
“怖くない。嬉しいよ。会えなくて寂しかったから”
“…香那。寂しい思いをさせてごめん”
“もういいから。…近付いて?”
この日、初めて私の目の前で彼は肌を晒した。いつも体を隠すようにする寝具が体から落ちても、私を抱くのを止めなかった。
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