prologue

1/1
165人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ

prologue

 強い女だと言われる。  そう言われるのは、嫌じゃない。事実だし、強い人でいられるように努力してるから。  でも、少しだけしんどい時もある。  そんな私が寛げる場所があった。  かつては。  仲間がいて、あいつがいて。  あれから、会えるかもしれない機会は、自分で潰した。もう、戻れないから。時間はもう流れてしまったから。  母だってそうだった。  1ヶ月の短期留学に向かう飛行機の中で、まどろみながら過去を思い出していた。  思い出したのかな?  夢を見たのかな?  ふと、温かい気持ちになったから、驚いた。  そうだ、私。  あいつの前では弱音も吐けたんだ。  最後まで、口にできないことが一つだけあったけれど、それ以外は全部、あいつには伝えられた。  言えていたら、何か変わっていたかな?  そんな問いを、今まで何回繰り返したかわからない。  甘い考えを振り払うように首を振る。  もう二十歳だし。  いい加減、過去から卒業しよう。  
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!