6 戦いの余韻に浸る間もなく

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6 戦いの余韻に浸る間もなく

初の中ボス戦で、チグサが双刃をオリハルコンメイスでぶっ飛ばし、派手に勝った。 私達勇者パーティーは帰ってゆっくりしたいけど、ウノシスタジアムを熱狂の渦に巻き込んだ直後だ。 簡単には帰れそうにない。 「いやいやいや、すごかった。女性四人の勇者パーティーで華があって、ピンチから結束して巻き返していく戦い方。ラストは、チグサちゃんが傷を負いながら、大逆転の場外ホームラン。僕が担当した番組でこんなに盛り上がったのは初めて。反響がスゴいよ」 上機嫌の魔道てれびディレクター、ノッポさん。 人類を守るため、その美貌を平気で「オトリ」に使ったチグサなんか、惜しみない拍手をもらってた。 予想してなかったくらいに会場が盛り上がってしまった。 魔道てれび関係者、雑誌の取材や街の有力者、たくさんの人が私達の控え室にやってくる。予想の5倍はいる。 けど、今後を考えると、塩対応だけはしちゃいけない。 ◆ 急遽、スタジアムの会議室を借りたけど、満席だ! 「さっそくですがチグサさん、「双刃のマリコ」戦でお顔に負った傷は大丈夫ですか?」 「うん、ヒールかけたから、じきに治るよ。心配してくれてありがとね。ほれ、どう?ここさわってみ?。もう治りかけてんだろ?」 「あ、・・キレイです・・」 笑顔で至近距離まで近づくから、記者さん真っ赤だ。 意外に天然のタラシなんだよ。 なにげに、気遣いが細やかだし。 こんな感じで、全ての言葉が好意的にとらわれ、1時間も会見が続いたよ。 三人とも、疲れた顔も見せず笑顔で答えたくれたね。 「いやあ、ありがとうございます。いい記事が書けそうですよ」 「まだ大したエピソードがないので恐縮です」 「次回の対戦も楽しみにしています。頑張ってください」 訪問客の対応でさらに1時間はきつかったけど、アスカ伯爵家、ギルマスに付き添ってもらい、無難に終わらせた。 ◆◆ 「じゃあ、護衛残して、事務処理に行ってくる。マリン、どっか行きたいとこあるか?」 「おまかせします」 やっと落ち着けた。 「あのさ、公開対戦を仕掛けた私達が言うのもなんだけど、えらいことになったね」 「スタジアム、ヤバかったね」 「アイドルでも、来るのかと思った」 「アタイたちのこと、見に来たんだよな」 「ま、今日はお疲れ様。会見も丁寧な対応ありがとうね。これで三人はこの世界のスーパーヒロインになったね」 「サラもでしょ。私、日本ではクラスの中でも目立ってなかったのに、スゴすぎる」 「私、チャンスがあったら、歌ってみたいです」 「アタイはスッキリしたな」 「あはは、次も盛り上げたいね」 ◆ なんて話してたら、外が騒がしくなっよね。 「ワカミ侯爵家の嫡男ミヤワだ。俺は。聖女を食事の招待に来たのだ。入るぞ」 「私は王都の魔道研究所から来たサファリだ。拳聖サラに用があって来た」 「勇者の御一行は、本日の戦いでお疲れになっています。ご配慮ください。それに、立場もあの方がたは特別なものです」 バキッ、バキッ! 「入るぞ!」 なんか横暴そうな奴ら入ってきた。 強そうな護衛が6人もいる。 いきなりこっちの護衛と睨みあった。 「初めまして、勇者の諸君。本日は、こちらのサファリ殿と一緒に、いい話を持ってきた」 なんだ?こいつ。 「聞けば、召喚されたのがモージーであったため、アスカ伯爵家が保護者のように思われているが、正式には全員がフリーな立場だ。我が家に迎えてやることにした」 「我が魔道研究所の方も、イレギュラー召喚者のサラ君をサポートをすることにしました」 気配を読むと、会議室の周りを20人くらいで囲んでる。 ナントカ侯爵の長男とサファリも勝手なことをまくし立てている。 何よりも、さらう気満々だ。 ◆ 恐れていたことが起きた。狙いは私だ。私には召喚研究者の「夢」が詰まっている。 普通の召喚者は、日本から召喚されるときに女神の恩恵を受ける。そして「超人」として現れる。でもアストリア側では、召喚される前後の違いを知る手段がない。 けど、私が間違って現地から召喚されれてしまった。 ギルドや至るところに、「拳聖」になる前の私のデータが残っている。 この体を切り刻んでいけば、どこかにアストリア人と違う仕組みが見つかる可能性もある。 拳聖の力を得た秘密の一端でも分かれば、強力な戦士を量産できるかも知れない。 見る人からみれば、最高のモルモットなんだろう。 それに私には弱点がある。孤児とはいえ、婚約者のマークや二人の親友とか、ほかにも大事な人達がいる。 「搦め手」も計算に入れて、この二人は仕掛けてきたのだろう。 ふふっ。 けどね、まだ甘い。 私はマークや親友たちが助けてくれなければ、死んでいた。本当の底辺を経験した。 だから、人から何かもらったとき、手放しでは喜べない。 「拳聖」になっても、力とセットで付いてくるリスクばかり考えてる。 今回は、まさかの「保険」で連れてきたマークも今は私と一緒で安全なんだ。 友達にもアスカ家から、密かに護衛を付けてもらっている。 「ヒトゴロシ」の技もこっそり鍛えている。 遠慮はしない、バカみたく強引に行こう。 ◆ 「あの、侯爵家の方とサファリさんは、魔王軍の方ですよね」 「「は?」」 「「「サラ?」」」 「私は間違い召喚者です。だけど、女神様に力をもらったので、魔王討伐に全力を尽くします。そんな私を「人」は応援してくれます。邪魔するってことは、魔王軍の手先です」 「無茶苦茶な」 「これだから底辺の人間は・・」 「そこの、侯爵さんの護衛に化けたオークから、始末しましょう」 「なっ!」 「おい、本気か?」 「拳聖」の力をただ、殺戮だけに向かわせる。心の中に満たされる黒いオーラ。殺る、殺る、殺、殺、殺・・ ◆ 「お待ちなさい」 「知らないお姉さんと、てれびカメラ?」 「いや、カメラのマークが何か違います」 「「魔界乃TV」って、一体何が起こってんだ?」 「お待ちなさい、サラさん。私は魔王軍四天王の1人、「規律のサリハン」でございます。魔王ハナコ様からの判定結果を勇者パーティーにお伝えしに参りました」 「魔王軍?」 「しかし、そこの貴族を名乗る人間らにより、せっかくのお祭りムードも台無しのようですね。私の独断ながら、排除を行わせていただきます」 これは、想定外。何が始まるんだろう。
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