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──移動中の車内で俺は裕翔に、隠している事を全て吐かされたんだ。
いや、吐くつもりでいたけれど、裕翔の圧に俺は負けちまっていた。
俺は裕翔と離れ離れになってしまいそうになった、あの大型ショッピングモールを運営している社長の子ども。
そのショッピングモールは、全国展開していて聞いた事がない人はきっといない。
そう、俺は俗に言う御曹司ってやつな訳だ。
ひとり息子の俺は、高校を卒業したら社長の座に就くことを父さんから約束されていて、それで一時期はどうするか悩んだこともあったし、裕翔が進路の話をした時が、正に一番葛藤していた時だったんだ。
こんな大役、俺なんかに本当に務まるのかと…
そんな時に勇気や希望をくれたのは、裕翔と駿だ。
夢を追っかけるキラキラとした駿と、先は短くとも楽しい人生を送りたいと…不安がありながらも強く生きようとする裕翔に、俺は背中を押し続けてもらっていたんだ。
自分にしか出来ない事を自分の手で全うしていくこと…その大切さを二人に教えてもらったのかもしれない。
そして今、俺はもう一人なんかじゃない…
大切な裕翔が隣でずっと微笑んでくれている…
俺の心の支えとして傍にいてくれている…
それだけで俺は頑張れる気がしたんだよ…?
ただ、裕翔としては最後の真実を聞いて、恥ずかしさや嬉しさと共に、不安も入り混じってしまっている様子だったんだ。
「や、大和…ぼ、僕…嬉しくて堪らないけど、そ、そんな重役…務められないよぉ…」
そりゃそうだ、番を結んでパートナーとなり、その先が社長の傍にいるだなんて考えたら、どうしていいのか分からなくなるよな…?
でも…でもな?裕翔、違うんだよ…
俺は、お前じゃなきゃダメだったんだ…
「裕翔違うんだよ、俺…一人だったらこんな重役に就くなんて俺も無理だと思っていた…でもな?今の俺には、お前が傍に居てくれる…」
「愛する人、大切な人が傍にいてくれるだけで俺も頑張れる気がしたし、裕翔の事も幸せに出来たら俺は嬉しい…」
「だから、裕翔にして欲しいことは…言わなくても、もう分かるよな…?」
裕翔に出来ること…
いや、裕翔にしか出来ないことがある。
それは、いつものように俺の隣で無邪気に笑いあったり、時に喧嘩をしたり、一緒に涙を流したり…
壁に一緒にぶつかり、共に歩み、二度と俺を一人にしないということ。
そして、俺も裕翔を一人にしないこと。
お互い誓い合った、傍にいるという約束をお互いで果たして、支え合っていくこと。
俺には裕翔という存在が必要だ…
それと同時に、裕翔にも俺という存在が必要なんだ。
どんなときも俺らは、二人で一つ…
きっと神様は、俺たちならこの条件を叶えられると信じて、番を認めてくれたんだと思う。
だから自信を持って、いつものように俺の傍にいて欲しい…それがどんな形であっても俺は裕翔を離すつもりなんか更々ない。
「分かった…分かったよ、僕は大和から離れない…大和が辛い時は僕が支えになる…そして大和を一人になんてしない……でもね…」
「…でも、なんだ?」
「これだけ約束して欲しいんだ…社長になってみんなから慕われる存在になったとしても…」
「僕は大和のもの…そして、大和は僕のものなんだ…だから、絶対に僕を一人に…」
裕翔の必死な願いが俺の心を温かくしてくれる…バカヤロウ…ぜってぇ一人になんてしないから…
俺はボディーガードの目も憚らずに裕翔へキスを交し、素直な思いを紡いであげたんだ。
『大丈夫…どんな時も、いつの時も…お前は俺のもの…一人になんかしない…寂しくなったり、辛くなったら、遠慮せずにいつでも俺を求めろよ?』
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