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──車内で最後の真実を受け止めてくれた裕翔。
そして、俺たちは会話に無中になりすぎていて、気付けば車は街中から外れ、実家の前でゆっくりと車が止まったんだ。
「裕翔、着いたよ?」
「…えっ、ええっ!?」
車内から見える光景に驚きを隠せていない裕翔。
はは、そりゃそうだ、俺ん家バカみたいに広いからなぁ…
その後、ボディーガードが車の扉をゆっくりと開け「大和様、裕翔様、お疲れ様でした。気をつけてお降り下さい」とその掛け声と共に、裕翔は恐る恐る車から降り、目に映った光景に目をまん丸くしていたんだ。
「や、大和…?ここが…」
「うん、俺ん家だよ?」
『はわわぁ…』と裕翔は、どうしていいものなのか分からない状況のまま、その場でキョトンと立ち尽くしていたけれど、俺はそんな裕翔の手を『ニッ!』と微笑みながらそっと握りしめ、自宅の中へと通してあげたんだ。
「ただいま~」
「お、お、お邪魔します…!」
「大和様、裕翔様、おかえりなさいませ!」
出迎えてくれたのは、我が家の家政婦さんだ。
裕翔は訳の分からない状況の中で感覚が麻痺し始めていたのかもしれない…
ゆっくりでいいから、頑張って慣れてくれよ…?
そんな事を思っていたその時だ、家政婦さんの後ろから俺にそっくりなスーツ姿の男性と、その横を寄り添い歩く華奢で綺麗なロングヘアーにカールがかかり、白いスカーフを首に巻いた女性が俺たちに近付いてきたんだ。
「大和、おかえりなさい」
「隣にいるのが裕翔くんか?」
そう、俺の父さんと母さんだ。
『お父さんはすぐに分かった、だって大和にほんとそっくりだったから!お母さんは女神様みたいに綺麗で見惚れちゃったぁ…』なんて裕翔が後々、俺に教えてくれたんだっけな?
「ああ、そうだよ、やっと連れてこれた」
「は、初めましてっ!や、やや、山下 裕翔ですっ!」
緊張のあまり噛み噛みの裕翔に、父さんも母さんもクスクスと微笑み返してくれたんだ。
「大和から聞いていた通り、いい子だな。裕翔くん、慣れないだろうから無理にとは言わんが、もっと肩の力を抜きなさい」
「ふふっ!そうよ?裕翔くん?もっとリラックス、リラックスっ!」
父さんと母さんの言葉に、裕翔も少しばかり肩の力が抜けたのか、俺を見つめてはニコッと可愛く微笑んでくれた。
そんな可愛らしい裕翔の仕草に俺もニコッと返してやって、その後、俺たちは家の大広間へと足を運んでいったんだ。
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