二人の居場所、俺はお前を離さない

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 ──大広間に裕翔を通し、いつも座っているソファーに俺と裕翔は腰を据えながら、両親と色んな話をしたんだ。  改めて裕翔と番を結んだことの報告や裕翔の家族のこと、学校での俺たちのこと。  裕翔は口を滑らせて、両親が知らない俺の素顔をポロッと零しやがって、頬を赤くしながら裕翔を叱る俺を見て、父さんも母さんも微笑んでくれて…  色んな話が進むにつれ、裕翔の緊張も(ほぐ)れてきたようだ…我が家の事を受け入れて貰えそうで俺は何よりだよ…?  楽しく過ごしていた俺たちだけれど、気付けば時間は夕食時に差し掛かっていたんだ。 「裕翔くん、今日はご飯を食べたらそのまま泊まっていきなさい。大和もそのつもりだろ?」 「ああ、そのつもりで用意させてきた」 「お父さん、色々とありがとうございます!」  父さんの優しい声がけに、裕翔も礼儀正しく返事をしてくれて、父さんも母さんもニッコニコだったんだ。  裕翔を二人に紹介出来て、本当に良かったな…  ◇ ◇  ──そして、今日の夜ご飯は懐石料理だったんだけれど、次から次へと出てくるおかずの品数にまたまた裕翔は、驚きを隠しきれていない。 「裕翔くん?食べきれなかったら無理しなくていいからね?食べきれない分は、きっと大和が食べるから!」 「か、母さん!…ゆ、裕翔…無理だけしなくていいからな!?」  くそぅ…やっぱり母さんには敵わない…  俺が思っていることを全てお見通しかのように声にしてくるんだから…は、恥ずかしいじゃねぇか…!!  そんな思いの中、夕食が全て揃い「いただきます」とみんなで声を合わせ、俺たちはおかずを口へと運んだんだ。  俺はいつも食べている料理だったから何も思わなかったけれど、俺の隣で美味しさのあまりなのか、裕翔の箸は勢いが止まらない。 「裕翔くん、美味しいかい?」 「はいっ!とっても美味しいですっ!」  父さんの声がけに、満面の笑みで裕翔は答えていたけれど…食べ慣れちゃってる俺は、もっともっと美味しい料理を知っているんだ。 「俺は裕翔のご飯の方が好きだけどな…」 「や、大和っ!」 「あらっ!裕翔くん、お料理するの?」  そう、裕翔が作る料理は本当に美味しい…  いつの間にか俺の胃袋は裕翔のものになっちまったってことか…はぁ、卵焼きが食べたい… 「こ、こんなには作れませんけど、ある程度は作れると思います…」 「へぇ~!だからなんだぁ~!」  んん…か、母さん…!!  ま、また、余計なことを…!! 「大和ね?裕翔くんの家から帰ってきたら、いっつも美味いもん食ってきたから、ご飯はいらないって話してたのよね?」 「か、母さんっ…!」 「なによ~!ホントのこと言っただけじゃな~い!大和、良かったわね?料理が得意な裕翔くんをゲット出来て♪」 「うふふっ!」と笑う母さんに対して、してやられた俺は、チッと舌打ちしながらハリネズミをわしゃわしゃとするしかなかった…  くそっ…くそぅ…恥ずかしいっ…!!  恥ずかしがる俺の横で、母さんの言葉に裕翔の頬もすっかり赤くなり、久々に俺たちは戦闘力0の状態になっちまったんだ…
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