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毎朝、6時15分、2車両目、右から一つ目の、左端の席。
1時間だけ電車に揺られ、学校へ行く。
朝が早いから、人がマバラで、非日常を味わえる。
好みの機械音の曲を聴き、ぼーっと外を眺める。
これが日課で、これが日常。
この時だけは、この時だけは、
親からの過干渉からも、苦手な勉強からも、
全てのことから逃れられる。
僕にとって一日の内で、唯一幸福な時間。
ただ、この時間が好きなのは、コレだけが理由じゃない。
向かいの席の、右端の席。
綺麗な制服に身を包んだ同い年と見られる少女が、毎朝座る。
僕の駅の、次の駅。
いつも彼女以外が座らないよう、
一駅分、ハラハラしつつ席を見る。
少女は、可憐で、華奢で、神秘的で、
今にも触れたら壊れてしまいそうな、そんな様だった。
毎朝バレないように、空を見るふりをして横目で眺む。
話しかけようだなんて思っちゃいない。
話しかける勇気も度胸もない。
唯、誰にも邪魔されず、この日常を噛みしめたい。
それだけなんだ。
恋じゃない。これは、誰がなんと言おうと、恋じゃない。
少女のことを知りたいわけじゃない。
認知してほしい訳でもない。
ただ、ひっそりと、幸せに浸りながら、眺む、
ただそれだけで、幸せなんだ。
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