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夏の日の思い出
「うわぁ・・・海だっ!」
この大陸の中央に位置するこの世界の中心と言われているエリス王国に有る王立魔法学園に通うソフィー=ホワイトは走る馬車の窓から顔を出しながら鼻に感じる潮の匂いに驚きながらもクスっと微笑んだ。
「まったく・・・危ないですわよソフィー?」
「マリア先輩の言う通りだよソフィー・・・アンタってドジなんだから落ちたらどうするのよ。」
そう注意して来る学園の三年生の先輩で、この馬車の持ち主で有るトリントン王国の侯爵家で有るマリア=ブルーノと同級生で有りながら東の島国のお姫様で留学生でも有る親友のミユキ=シジュウインから強引に腕を引っ張られたソフィーはアワワっ!?と驚くと、更に対面にはエリス王国で商会を父に持つ二年生の先輩で有るアンナ=ブルーハートからクスクスと笑われてしまった。
「ソフィーは海を見るのは初めてなの?」
「いえ?そんな事は無いんですが、私の故郷って港町だから泳ぐ場所が無いんですよアンナ先輩っ!」
「まあ・・・貿易港ですしね?」
ソフィーからの不満そうな声にフォローを入れたマリアが苦笑いを入れていると、彼女達・・エリス魔法学園生徒会の面々は目的地で有るブルーノ家の領地に有る別荘に到着したので有った。
「まだ降りないで下さい・・・私が別荘の管理人と話している間にミイは周囲の警戒をお願いします。」
「分かったニャ!」
ゆっくりと止まったマリア達が乗る馬車の後方から別の馬車に乗っていたブルーノ家のメイドでマリアの侍女で有るリーエとミイがそれぞれ動きだすと、妙に警戒してますね・・・?と自分達が入っている冒険者パーティーで前衛を務めるミユキから首を傾げられたマリアは当然ですわよ・・・と答えながら窓から背後に見えるノワール家の馬車に苦笑いを浮かべる。
「いくら夏季休暇中とは言え・・・他国の侯爵家で有るリリエに何か有ると国際問題にもなりかねませんからね?」
そんな声を上げるマリアの目の前から何を言ってますの・・・?と呆れた顔で留学先のエリス王国で宰相の父を持つ侯爵家のリリエ=ノワールと彼女の護衛騎士で有る二年生のキッツ=ローランドがリーエのエスコートで馬車から降りて来た・・・
「あの・・・マリア様?少し警備が厳し過ぎやしません事っ!?」
「彼女の言う通りだ。リリエの護衛は俺一人で充分だと思うが・・・?」
そう言いながら困惑する二人にすみませんが・・・とマリアは申し訳無さそうに頭を下げた。
「貴女達はご友人としてここは我がブルーノ家の領地に来ています。ですので貴女達に何か有ると非常にマズいって事は貴女も分かりますねリリエ?」
「いや、まあ・・・分かるけどね。」
自分もエリス王国の侯爵令嬢で有る為にリリエも渋々納得していると、おや・・・マリアお嬢様では有りませんか?とマリアの侍女見習いで有るミイの声に応じて還暦の渋い執事が別荘のドアを開け出迎えて来た。
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