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いや、確かに有効だ。
有効だけれど、この愛らしい生物がじゅわっと溶ける様は想像したくない。
想像もしたくないのだから、
実際にやるのはますます無理だ。
これ、やった人いるのかな。
今度はツイッターで “#夏のゆきうさぎ” と
検索する。
『画像より可愛い』
『可愛くてどうにもできない』
『誰かこの子をもらってください』
『つつきすぎてそろそろ指燃える』
『ゆきうさぎ出ました。この夏終わった』
『今年の夏はゆきうさぎのために働こう』
軒並み完敗か。
役立たずに終わったスマホを置き、
あたしは冷蔵庫に向き直った。
ゆきうさぎは留まるには狭すぎるくぼみに留まろうとして、ふくふくと身じろぎしている。
健気だ。
しかしこのままではいられない。
エコバッグの中では今も、
刻々とドライアイスが溶けている。
何とかしてゆきうさぎを冷蔵庫からひっぺがし、
アイスを収納しなくては。
そうか。冷気だ。
ひらめきに突き動かされて、
床に置いたエコバッグへ飛びつく。
ポリ袋入りのドライアイスを出すと、やはり、
ゆきうさぎの様子が変わった。
こちらを視野に入れつつも冷蔵庫第一の姿勢でいたのが、ぴくんと耳を動かして興味深げに身体を伸ばす。
ポリ袋を冷蔵庫へ近付ける。
赤い瞳がきらきらし始める。
ほうら、こっちこっち。
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