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「手紙書くからな。毎年、年賀状も送れよ」 「そうくん、元気でね!」  島の人たちに見送られて颯太と父親は朝一のフェリーに乗り込んだ。 「颯太、ほら」  父親が差し出した乗船券にはやはり〝小人〟と書かれていた。  デッキに立って船着き場に集まった人たちの顔をぐるりと見回す。住人全員が顔見知りなほどせまい島だ。島に住んでいる人全員が見送りに来てくれている。  ただ一人、夏穂をのぞいては――。 「寂しくてお見送りに来れなかったのね、夏穂ちゃん」 「颯太くんと夏穂ちゃん、小さい頃から仲良かったものね」 「許してあげてね、そうくん」  そう言ってニコニコと笑うおばちゃんたちの顔は海からの照り返しで日焼けしていた。日傘を差した夏穂の母親と、母親に手を引かれて笑う夏穂の肌の白さが頭をかすめた。  颯太と父親だけを乗せたフェリーがゆっくりと動き出す。船着き場に並んだ島の人たちが大きく手を振っている。父親も手を振り返している。 「また会える。……会いに来ような」  父親の言葉に颯太はデッキの手すりを握りしめた。手を振り返すでもなく、島の人たちが小さくなっていくのをただ見つめていた。  島の人たちの頭上には夏らしい青空と真っ白な雲が広がっている。穏やかな風が颯太の肌をなでた。  フェリーは島のまわりを半周して次の島へと向かい、最後に街の船着き場へと向かう。  神社の裏手のどん詰まりにある鳥居が見えてきた。島の高台にある、生い茂った木々に囲まれた古い朱色の鳥居。その下で真っ白な日傘がくるりとまわるのが見えた。  真っ白なワンピースを着て、真っ白な日傘を差す人なんて島にはいない。何年も前に島から出て行った夏穂の母親か、それとも――。
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