タヌキと爆竹

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タヌキと爆竹

「ありゃ。こがなとこから、いつの間に咲いちょうがかぁ」  里山町公民館の玄関前で掃除をしていた山口尚一は竹箒を手にしながら、丸いお地蔵様のような柔和な顔をさらに緩めた。  舗装などされていない地面がむき出しの駐車場の奥に、ひっそりと佇む三角屋根平屋建ての公民館の、コンクリートで固めた玄関ポーチと地面の境目あたりから、1メートル近くに生育し、伏し目がちに真っ白な花びらを開いた野草、タカサゴユリを見つけたのは、暑さの盛りも過ぎた、橙色の空にまだらな雲がかかる、夏の終わりの夕暮れだった。  
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