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エピローグ
空が広い、と助手席のあやのが外を眺めながらはしゃいでいる。
「すっかり東京の人ぶってる」
「東京の人だもん」
「高速通ってんだからどこだって同じ光景しょ」
「市内入ってからも広いよ。道も空も。なんだろう、建物の密度が違う。あと空気が乾いてて気持ちいいんだ」
高校までは同じ進路を歩んでいたあやのは、大学受験を期に東京に在を移した。そのまま東京で就職して二年、お盆に帰るという知らせをうけて、ミナは空港まで車で迎えに行っていた。
「ホテルとったんだね」
「うーん、もうタイキも大分かさばるようになってるからね。うちの部屋も物置になってるし、ついでに遊びに行くにしても中心街のホテルが楽だし」
どうせなら夜遊びしたいし。すすきので食べて飲んでパフェ食べて……とすっかり観光気分のあやのだが、それも無理はない。進学してから、正月以外に帰ってくるのは初めてなのだ。夏の札幌は楽しみたいだろう、東京の人としては。
「かさばるって言ってもまだ小学生でしょ」
「かさばるよお、大きいもん。めちゃ食べるし、野球少年してるし、夏に同じマンションで過ごすのは暑苦しいわ」
笑うあやのにつられてミナも笑う。
結局、あやのの両親はあやのが高校生のころに離婚した。父親との関わりはまだあるようだが、細かいところまでは聞いていない。家は売却し、それぞれにマンションを買ったようだった。
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