1話

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「人なんかどこでも死んでますう! そんなこと言ってたらどこにもデート行けないしょ。夜の山だから寒くなるし、ちゃんと暖かくしてきなよ、なんて言ってくれて、マジでアツシ先輩推してて良かった〜! って感じなんだから! 大体さえぴは怖がりすぎだよ。そんなんじゃ裕太とお祭りデートなんか出来ないよ!」  小枝子が水を差すと、萌加は演技過剰に頬を膨らませてみてから、小枝子と裕太いじりへと戦法を変えたようだ。 「どういうこと? 二人そういう感じなん?」 「そうだよー! ミーナって全然気付かないよねえ」 「ちょっと待ってよ、そういう感じって何? まだ私達そんなデートとかっていう段階じゃないっていうか、私がまだ街に慣れてないから裕太くんが気にしてくれてるっていうか」 「まだ全然そういうんじゃないから! 変なこと言うなよな」  いつの間に、という衝撃で思わず声をあげたミナに、小枝子と裕太が言い訳めいたことを返すが、ますます萌加の指摘が本当らしいという印象を抱かせるだけだった。  萌加、小枝子、裕太がそれぞれに14才の夏を満喫しようとしているなか、自分は何も変わらず小学校からの、いや、幼稚園からずっと、同じ場所で似た顔ぶれのなか過ごす夏を無邪気に信じていたのかもしれない。そう感じたミナが、幼稚園からずっと一緒で一番の親友だと思っているあやのに意識を向けたときだ。
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