1話

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 夕飯時の六時まで駄弁って過ごすのが五人の常だったので、仕方がないとはいえ、四人となるとミナ自身の振る舞いもどうしていいか分からなくなってしまう。  萌加はいつでも自分自分自分で、話を聞いている分には楽しいけれど、共感し合えるという相手ではない。  小枝子は転校してきたばかりでよく分からないうえ、裕太とどうやらいい感じらしい。  他の三人の話に、あやのと一緒になって反応したり、時折二人で顔を見合わせて笑ったり、そういったことが出来ないとなると途端に一人になってしまう。  結局ミナもいつもよりは早めに帰宅することにした。あやのの言葉は、夕飯を食べる間も、推しのインスタライブを見ている間も、ひっかかり続けていた。弟をかわいがっていて、母親を気遣って手伝おうと早く帰って、それは普通に「いい家族」に決まっている。しかも生まれたばかりの赤ん坊の居る家というのは、協力も生まれるだろうし、明るくならないわけがない。しかしあやのは複雑な表情で「いい家族っぽい」と呟いたのだ。  幼稚園で出会って友達になってから、お互いに隠しごとなどなかったはずのあやのまで、ミナの知らない秘密を抱えている。
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