2話

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2話

「パパがママの妊娠中に浮気したって」  あやのの部屋でタイキを抱かせてもらいながら、そんな話を聞いた。 「うちんちの雰囲気は最悪だよ。タイキの世話でいっぱいなのに、ママはパパに協力しろって言わない。関わりになりたくないみたい。パパも気まずいみたいで遅くまでわざと仕事してる」  タイキの頭は体に対して大きすぎて重すぎる感じがする。実際に、うまく支えていないといけないのだと抱き方を教わったときに聞いた。  体の半分くらいが頭のような気がする、不思議な生き物だった。薄い皮膚の下にたぷたぷにつまった血液を感じ、乳臭さも血の臭いのような気がしてくる。とにかく暖かい。小さすぎる心臓の脈打つのは分からないが、呼吸に合わせて全身の血が揺れているのは分かる。 「あやののパパとママはずっと喧嘩してるの?」 「もう冷戦だよ。離婚の話も出てる。タイキが生まれたばっかりだからすぐには出来ないけど、小学校に上がる頃には……って聞いた」 「腕が疲れたし、そろそろ怖いよ」  腕の中のタイキがむずがりだしたので、ミナは上半身ごとあやのに傾けて言った。受け渡しも慎重に行われなくてはならない。
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