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ユミコ。中学生。
私は彼の素敵な所をまた一つ知った。
ランチの時間に流れてくる放送。
滅多に彼はマイクの前には立たないらしく、でも、それでもやはりたまに彼の放送を聞く時がある。
あんまり話をした事がないので、一方的に話す彼の低い声はとても耳心地が良かった。
早くもなく、遅くもなく。
ちょっと低い低音で彼は話す。
大体学校のお知らせなんかが多いが、チョイスする音楽の豆知識なんかを前振りで語ってくれたり、言葉の由来なんかも話してくれる。
周りの生徒の反応は誰一人として聞いていないかもしれない。
でも私にとっては幸せな時間だった。
たまたま、下校時間が一緒になる時があった。
雨でも降ってたら傘に入れる作戦も考えていたが、彼はきっちり傘をいつも常備させている。
クラスが全く一緒にならないので、なかなかきっかけが掴めない。
まぁ私も何人かの友人と下校するので、実質、そんな勇気もない。
そもそも私の周りの友人からは彼の話を聞いた事がない。
それだけアウト・オブ・眼中なのだろう。
でもきっかけさえあれば、もっと近づけるのに、、
でも、せめて彼の中で「私の存在」というのを知って欲しい。
だから私はそれなりに努力はした。
移動教室の前は彼のクラスを覗いてみたり、意識させたいが為にわざわざ様もないのに、彼のクラスの友人の所へ行って、彼をチラ見しながら話し込んだ事さえ何度もあった。
本当の事を知りたかった。
小学生の時に彼が言ったセリフが今でも忘れられない。「高山さんって、いつも丁寧だよね。」
いつも、っていつから?
とはいえ、聞き返さない。
そんな所に気がついてくれる人なんていなかった。
私はいつも大勢の中の一人で、特に個性らしいものはなかった。
だから、あの時の彼のセリフは頭から離れない。
が、私の勝手な妄想が先走ってるだけかも知れないけど。
まわりには流石に「告白しちゃいなよー。」と気軽に言われるが、相手の思惑も分からないのに公開処刑はたまったもんじゃない。
「とりあえず付き合ってみたら?」も結局他人事である。
私的にとりあえず、という言葉はない。
そんな地雷だと分かっているワンチャンに賭ける程、私の想いは軽いものではない。
そう思うと今の関係がいいのかも知れないけど、何にもしなかったら、行動を起こさなければ、何も進展はない。
それは重々分かっている。
要は私は傷つくのが嫌な勝手な臆病ものなのだ。
今の状態であの彼に好きな子が出来たら、私はもうなす術がない。
これだけ片想いしてたんだから!
は勇気ある人には何のダメージも与える事は出来ない。
片想いは結局片想いなのだ。
女子の恋バナは確かに良く聞く。
勇気は必要だ。
今日日、男側が絶対告白しなきゃならないなんて古くさい考えはない。
でも私は恋愛ビギナー。
どうしてもネガティブに考えてしまう。
せめてもう少し自慢出来る所があればいいし、せめて共通点で話は出来る。
声が好きです。
集中してる姿が好きです。
いつも友人の話を聞く姿勢が好きです。
貴方の事が知りたいです。
言いたい事は沢山ある。
でも好きだからこそ、拒絶された時の事を考えると、その一歩が出ない。
そう思ったら、両想いで結ばれるって凄い奇跡じゃない!?
続く。
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