非モテ君と恋愛処女さんの恋の行方

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タカシの初恋。 その女の子は特別話題に上がる様な存在ではなかった。 たまたま同じ幼稚園にいて、早い子では結婚の約束なんていうごっこ遊びを真剣にやる様なお年頃だった。 当時の俺は、あまり異性というものが分かっていなかった。 だからこれが恋なのだという事に気がつくまでだいぶ時間がかかった。 では何故その子の事を意識する様になったのか? 話はごく単純である。 その子は絵本を読むのが好きだった。 他にも絵本を好む子供は多かったのだが、俺が気になったのは、彼女の密かな丁寧さだった。 本を読む時も、片付ける時も、とにかく丁寧なのだ。 それが気になり始めると、実は本だけではなく、誰かが使ったおもちゃ、誰かが落としたクレパス、勿論自分の道具入れのロッカー等、誰も得しないのに、その子はいつも丁寧に片付けた。 確かにそれは女の子だから、とか言う前に、人として尊敬するとかの第一印象だった。 彼女は俺と違って明るかったので、絵本を読んでない時は園庭で遊ぶ事が多かったけど、誰しもが見向きもしない様な事に気がついて、当たり前の様に片付けたり手伝ったりしている姿がとても印象に残っている。 まだその時は同じ幼稚園のクラスメイトという気分だけで、それ以上の感覚はなかった。 でもいつの間にか俺は、皆とは違う事をする彼女の事を目で追っていた。 自分が一人で泥団子をピカピカにしている間も、開放的に遊ぶ彼女を見て、皆が遊び終わった砂場のおもちゃを拾い集め、フラフープや縄跳びを片付ける。 他のクラスメイトは蜂の子を散らす様に教室に戻って行く。 彼女も友達に呼ばれる。 「うん!これ片付けたら行くねっ!」 と明るく応える。 当時の俺はそれが何故か不思議で仕方がなかった。 それが、彼女とのきっかけである。
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