非モテ君と恋愛処女さんの恋の行方

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ユミコの初恋。 小学校に上がると女の子は当たり前の様に恋バナをする。 好きなアイドルはいて当たり前。 ドラマやお洒落情報やプリンセスアニメも必須だ。 昨日と同じような服装をしてると必ず指摘される。 参観日には、自分の母親が誰よりも美しく綺麗でいなければならないマウントは必ず始まる。 当時の私も右に倣えでそれなりに好きなアイドルなんかもいた。 小学校低学年でも【彼氏】がいるのは結構皆の羨望の眼差しであった。 勿論イケメンを当時から狙い合うのは当たり前で、遠足や課外授業等では女子達は競いあった。 そんな中、私が好きになったのは、イケメンでも何でもない。 下手したら「えー、あの子のどこがいいのー?」と突っ込まれそうな相手だ。 だから言えない。 その男の子は、確かに見栄えはしないし、足が速いという訳でもお喋りでもなかった。 でも私はたまたまクラスが同じになった時、風景画を描く授業があり、皆それぞれ校舎の好きな所で描く事になった時、私のすぐ側で絵を描いていたのが彼だった。 その時は何の情もなかった。 お互い2メートルの距離で黙々と絵を描いた。 対象物が同じ、という事もあって私は気軽に声をかけた。 「どうしてこの場所にしようと思ったの?」と。 すると彼は「ここからしか見えないあの鉄塔が描きたいんだ。」 と言った。 ビックリした。 まさか私以外にあの鉄塔の事を気にする子がいたとは! 私は昔読んだ絵本の中に同じような紅白の色をした一際目立つ鉄塔と同じ様なその鉄塔を一人で気に入っていた。 だからといって、誰かに共有しようとか思った事もない。 だからビックリした。 結局その日はそれだけの会話だった。 その後、完成させられた彼の絵を見て、私は彼の事が好きになった。 単純かも知れないが、彼の絵はとても個性的で、クラスで表彰される様な物ではなかったが、少なくとも私の心には刺さった。 何の変哲もない風景画。 でも彼の絵には、鉄塔が小さく「僕はここにいます。」と主張していた。 それだけで充分だった。
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