非モテ君と恋愛処女さんの恋の行方

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ユミコ。小学生。 彼の絵から彼の事が気になり始めていた頃、独特な雰囲気を持つ彼を目で追うようになった。 目で追うだけなら自由なのだ。 しかも誰も気にしていない相手の男子だったので、こっそり探りを入れるだけなら、誰にも気がつかれない。 でも好きだとか、付き合いたいだとか、周りの友人の様には思えなかった。 そもそも付き合うって何?って感じだったし、好きです、って告白しようと想像するだけで顔から火を吹きそうだ。 好きです。ってもし言ったとして、相手が「それで?」とか答えられたら、私はもうどうしていいか分からない。 私が彼の事を好きだとちゃんと思ったのは小学校もそろそろ終わる頃だった。 確かに絵は素敵だった。 寡黙に何かに集中している時の彼の姿も一所懸命で好きだった。 友人と話をしている時も、どちらかと言うと聞き役で相づちばかり、でも上手に受け答えしていた。 教室の掃除当番が当たった時、たまたま彼と一緒になった。 勿論二人きりではなかったが、机を下げて掃除をしていた。 私は掃除は嫌いではない。どちらかというと好きだ。 綺麗になっていく工程が好きなのだ。 だから本の背表紙も確認して片付けるタイプだ。 掃除がそろそろ終わりかけの時に、皆掃除道具入れに早い者勝ちとばかりに片付けて行く。まぁ早く終わらせて自分の時間を持ちたい気持ちは分からなくもない。 だからそこは多少教室が汚れていても否定はしない。 けど、私的、個人的に気になったら最後までしないとダメなのだ。 これは自己満足の世界なので、一人で勝手に掃除を続けた。 当然もう誰もいないものだと思っていた。 別に全く苦痛ではない。 さて、納得が行くまで掃除が出来た。感無量!と自分の道具を片付ける時に始めて気がついた、そこに彼がいた事に。 今までずっと一緒に掃除をしていた様だ。 私が逆にびっくりしていると彼がボソッと言った。 「高山さんって、ほんといつも丁寧だよね。」と。 いつも? え? 私を見てくれてたって事?? 私の握っていたホウキを彼は手に取り、纏めて片付けてくれた。 私は自己満足でやってた事なんだけど、それを見てくれていた人がいたという事が純粋に嬉しかった。 彼は女子のご機嫌取りをするタイプではない。 私は嬉しくなり、ついつい仲のいい友達に「気になっている男子がいる」と言ってしまった。 誰かに共感して貰いたかった位嬉しかった出来事である。 けれど、名前は絶対に明かさなかった。 冷やかされるのも嫌だったし、それで彼に被害がある可能性も考えた。 片想いだったら、ただの自爆である。 しかし当時の女子の中では「好きな男子がいる。」というだけでステータスだったので、とりあえず女子の話題に付いていける事にはなった。 好きだけど、もっと話をして知りたいけど、、きっかけがない。 あまりに共通点が無さすぎる、、 どうすれば彼に近づく事が出来るだろう、、 意識すればする程、以前の風景画の時みたいに気軽に話しかける事が出来なくなっていた。
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