グロスターの館

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グロスターの館

失われた断片・グラスとリチャード グラスは英語で草、フランス語でアイスクリームを指す <序章> リチャード・グロスターの館、 そのカントリーハウスは、由緒ある建物であった。 グロスター家は、広大な敷地を持ち、小作人も多く名家であったが、 しかし、リチャードは正式な嫡男ではない。 先代のグロスター卿の愛人、 それも高級娼婦の産んだ子どもだ。 グロスター卿は高齢で、母親は彼を産むと、産後の肥立ちが悪く亡くなった。 しかも、皮肉な事に、グロスターの跡継ぎは、リチャード以外には、 産まれなかったのだ。 娼婦の子どもであるリチャードが、正式にグロスターの当主になったのは、 父親が病気で亡くなった18才の時だった。 彼は父の愛も、母の愛も知らず、幼少時は乳母に育てられ、 その後はパブリックスクールの寄宿学校に突っ込まれた。 彼は上流階級の子弟として、言葉使い、アクセント、振る舞い、知性、 さまざまな教養を身にはつけたが、いつも誰ともつるむことなく、 孤立して本を読んでいた。
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